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魔剣の君  作者: Blood orange
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おじいちゃんは、何処へ?

ワシは、御年98才の老人だ。

長年連れ添った婆さんは、3年前にワシを置いてさっさと天国へと旅立って行ってしもうた。見かけは日本人のようじゃが、ワシの中には異世界人の血が流れておる。この事で、婆さんにしなくても良い苦労をかけさせてしまった。

息子達は、それぞれに独立して結婚し嫁を貰い、孫もいるし、曾孫も出来た。

人生を謳歌したワシには、何も失う物など無いと思っておった。

ワシは、長男の夫婦と一緒に住んでいる。

長男のサイモンは植物を育てるのが上手だった。ワシ達親子は、花園を作って生計を立てていた。孫のフィンが家業を手伝う様になってから、ワシは忙しい時にだけ手伝う事になった。

親子3世代で、同じ家業を継げるのは、本当に幸せな事だ。

ワシは、神様に毎日この幸せが続く事を祈っていた。


まだかくしゃくとしているワシは、自分の事は自分で何もかもやっておった。ボケたくは無いからな。

そんなワシの唯一の楽しみは、曾孫のファートムと毎日自宅庭で、シャボン玉を吹いたりして、遊んでいる事だった。

曾孫のファートムは、今年で5才となる。

こんなに、眼に入れても痛く無いほど可愛い曾孫が出来るとは、思っても見なかった。


じゃが、ある日それは叶わぬ夢になってしまう。

ある冬の事じゃった。

ワシが毎日の日課となっている庭掃除と散歩を終わらせ家に帰り着くと、台所でファートムの母親が泣いておった。


「アンナどの。どうしたんだい? なぜ泣いているんじゃ? ファートムはどうしたのじゃ?」


すると、アンナは嗚咽を堪え切れなくワシに縋り付いて泣き出した。


「大じいちゃま。ご、ごめんなさい....ファートムが...」


泣き叫ぶアンナさんを何とか宥めようとするが、彼女は過呼吸を起こしていた。何とか宥めてアンナさんの話を聞く事にした。

アンナの話に寄ると、ファートムは、今朝元気に家を出て行ったのだが、幼稚園の遠足途中の幼児の列に、いきなり突っ込んで来た酒帯運転のバイクに跳ねられ、ずぐに病院に担ぎ込まれたのだと言うとアンナは泣き出した。

そして嗚咽を上げながら、可愛いファートムは未だ意識不明の重体と言っていた。

ワシは、驚いてファートムが入院している病院へとアンナさんと一緒に向った。

ワシの目には、ICUの中で色々な装置につなげられた管で何とか生命維持を続けているファートムの体がベッドの上に横たわっていた。

ワシは、神に祈った。

どうか、ワシの命をあの子に授けて下され。ワシの願いを聞いて下され。

皺が寄った血管が浮き出ている両手を擦りながら合掌するとワシは神への祈りに入っていた。

いきなり目の前が白く光ったかと思うと、ワシの体は病院の廊下で倒れておった。それを見た看護士、医師、そしてアンナさん達が大慌てでワシの倒れた入れ物と化した体に縋り付いて泣いていた。

医師は、ワシの脈を計って見ている。そして、首を横に振った。

その情景を見て、ワシは自分の隣に立っているであろう神様に礼を言った。


 「どうか、神様!ワシの可愛い曾孫を助けて下され。どのような裁きでもワシは受けます。例え、他の世界へ飛ばされてもワシは文句は言いません。ファートムが無事に天寿を全う出来るのであれば...。」


神様は、ワシの皺が寄って小粒のようにしか見えない目を見ると、コクリと頷いて下さった。

ワシの中から魂が取り出されるとそれは、二つの眩い球となり一つはファートムの中へと消えて行った。そして一つは、白い花畑の扉の向こうへと消えて行った。

ワシの意識は、まだファートムが横たわっている病室の中に居った。ワシは、ファートムに近づくと声をかけた。目を覚ましたファートムには、まだワシがぼんやりだが見えているらしい。


「大ジージ?どうしたの?」


 ワシは、ファートムにこれから旅に出る事になったと告げた。

ファートムは泣いていたが、ワシはファートムに出来る事は、ワシの魂の一部をお前に渡す事だと言い残すと霞の如くワシの体は、徐々に薄くなって行った。

完全に消える前に、ワシはファートムに「アンナさん....お前の母さんをこれ以上泣かせてはならぬ。分かったな、ファートム」そう告げると、ファートムは黙って頷いていた。

ワシは、最後の力で、ファートムを抱き締めると光の粒となって消えたのだった。

ワシの意識は、花畑の壁にあった扉の向こうに飛ばされて行った。

ファートムよ。どうか末永く元気で暮らせ。


医師達は、ファートムが奇跡的に意識を取り戻した事に驚いていた。アンナは、我が息子を抱き締めていた。

ファートムは何が何だか分からずに「大ジージがね、僕に大ジージーの魂の一部を上げるって言っていたよ。それから、大ジージったら遠い所に旅に出るんだって。僕にお母さんを泣かせちゃダメだって言っていた」そう言うと、アンナは目を見開いて泣いていた。


「大おじいちゃま...!」


両手を顔に覆って泣いている母さんを見てファートムは病室の天井を見上げた。

バイバイ。大ジージ。元気でね。

新しくこう言う風なファンタジックな物を書き始めました。色々と手探りで書いております。誤字脱字があると思いますので、ご了承下さい。


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