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私立高校でもいいじゃね〜か

全くのど素人で、行間の開け方も解らないヒヨッコです。かなり読みづらいと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いします。

神様はなんてことをするんだろう。 公立高校受験日に40度の熱をだし、保健室の机の上で筆記用具と答案用紙の右上にティッシュの箱を置き、朦朧としながら試験を受けた受験生が全国にどれだけいるだろうか。 正直、俺は試験どころではなかったが、両親、特に母親が「後悔するから受けなさい!」と半泣き状態で、俺が答える間も無い位の勢いで半ば強引に連れて来られた。 ただ、親の気持ちも解らない訳ではなかった。 公立と私立では入学金や授業料、世間体からして違うのだ。 最悪の状態の中、色々な事が頭の中を駆け巡りながら俺は試験を終えたが、ある程度の勝算はあった。 受験に定評のある学年主任が担任であり、「お前の受ける学校は一年毎に倍率が変動して、今年は下がるから絶対大丈夫だ!」更に「合格一番乗りだなぁ〜おいっ!ツイてるなぁ〜!」とまで云われ、疑う余地も無く、そこそこの安心感みたいのもあった。 合格発表の日、受験番号156番、三回見直したが綺麗過ぎる程無かった。 自宅に戻り夕刊の受験速報に目を通し倍率を確認し愕然となった。 16.8倍、全国でも断トツ、全国平均1.1倍、高くても3.4倍、考えられないなんてもんじゃない。全身から力が抜けていった。 翌日学校に行くと担任が平謝りして「今年は下がるはずなんだけどなぁ〜、なんで上がったんだろうなぁ〜。」と何度も呟いていた。 15歳の俺は軽く人間不信というものを覚えた。 残された道は私立への一本道、だが公立しか頭に無かった俺は私立は適当に希望校を書き、札幌でも下から数えた方が早い位の学校に願書を提出していた。 俺が通う事になる、札幌私立政外高等学校である。進学よりも就職に重点を置いた商業高校なのだが、偏差値はというと決して褒められたものではなく、余程の事がない限り不合格にはならないという学校である。そこそこあった希望や期待は、あっさりと砕け散り、劣等感8割に虚脱感6割。そう、10割など軽く越えていた。どっぷりとした気分の中、初登校の日、入学したはいいがこの学校には靴箱というものが無い。 上履きは各自靴袋を持参し毎日持って来なければならない。なんて不便な学校なんだろう。 これだけでも嫌になるが、制服が紺色の詰め襟で、何故か首と袖に黒い刺繍が施してある。更に男子校であり、勤務している先生に至っては全て男性であり、他校を定年になった先生が半数以上を占めていた。 その為か二、三年生の大半は先生をバカにしたような態度の者が多く、例にもれずそういう生徒はヤンキーが殆どであった。 何故俺はこんな仕打ちを受けるんだろう。 今までにそんなに悪い事したんだろうか。 それとも御先祖様が前世で悪い事をし、その因果関係で俺に巡って来たんだろうか。 考えれば考える程テンションが下がりまくり、三年間通うと思うと世界の終わりが近づいた気がした。新一年生252名、1クラス42名で6クラスに振り分けられ、俺は1年A組になった。教室に入り席に着きながら周りを目の動きだけで見渡した。 見るからに進学校受験に失敗し仕方なく入学した雰囲気のヤツがいると思えば、ヤンキー丸出しのヤツ、ここしかなかったような感じでホッとしたようなヤツ、妙に女っぽいヤツ、色んなヤツがいて、何故か「そうだよなぁ〜。」と納得したような感じになってしまった。 担任の先生が来て「出身中学と簡単な自己紹介をして下さい。」ということで、ややしばらくして俺の番がきた。 「清川中学から来ました、御藤一宏です、三年間の内で熱中出来ることを見つけたいと思います、よろしくお願いします。」 終わった後で「フゥ〜」と息を吐いた。一通り自己紹介が終わり休憩時間、隣の席の暗めなヤツが話しかけてきた。「僕、越沖中学から来た砂間 達夫です。御藤君清川中学なんだ、噂で聞いた事あるけど結構ヤンキー多いんでしょ?」と上目遣いで尋ねてきた。整髪料を使っているわけでもなさそうなのに濡れたようにペタッとした七・三分け、面長なのに妙に角張って頬骨がでており目は細く鼻は鷲っ鼻、口は小さく唇は薄い。肌の色は内臓が悪いんじゃないかと思うような薄黒さ。中学の社会科の教科書に載っていた関東ローム層のような色だ。どう見ても15〜16歳には見えない。全く面識の無い人なら、会った瞬間に避けるか死んだフリをするんじゃないかと思うくらい不気味だ。その割にガタイは良くガッチリ型で身長は俺より少し低い170センチあるかないか位。見るからに中学でいじめられていたような匂いがプンプンした。 「いや、そんなに目立って悪いヤツはいなかったよ。」軽く答えた。 「御藤君はどうだったの?」 「俺なんて全然だよ。」初日で初対面のヤツに深い話しはできないし、しないのが賢明と思い社交辞令的に済ませた。 実際俺はヤンキーでは無かったのだが、札幌で最強最悪と恐れられていた中山中学のヤンキーグループのトップ、後藤正義と3歳からの幼なじみであり小学校卒業まで同じクラスだった。その後藤と中学3年の時、偶然地下鉄の中で再会し、今度遊びに来いと誘ったところ俺の通う清川中学に6人連れてやって来た。本当に悪くてヤバそうなヤツらだったが、話してみると楽しくていいヤツばかりだった。ただ、その光景を見た清川中学のヤンキー共はそれ以降俺に一目置くようになった。 なのでヤンキーでは無かったがヤンキーと思っていた生徒もいたようだ。 「なぁ、彼女とかいるの?」 砂間の前の席のヤツが話しかけてきた。 鹿田松夫というヤツだ。 確か自己紹介で野球の経験は無いけど野球部に入りたいとか言ってたが、身長は160センチも無いだろうしどう見ても運動神経があるようには感じられない。御地蔵様によく似ていて、たらこクチビルがやけに目立つ。が、ヤル気はあるのだろう。 部に入る前から丸刈りにしてるのはコイツだけだった。「中学の時は何人か付き合ったけど、今はいないな。」 「え〜っ!そんなに付き合ったのか〜!て事はもう経験済みなのか〜?!」 鹿田は目を輝かせている。 「そんなにってまだ人数言ってね〜だろ!」 「でも経験してんだよな〜?!」 「まあ経験はしてっけどな。」 「やっぱりなぁ〜、何人、何人?」 「4人しかしてね〜よ。」 「よ、4人〜!!すげぇ〜な御藤!! でもお前ならわかるわ、なぁ砂間。」 砂間はニヤ〜っとしながら首を何度も縦に動かした。 「お前は張り子の虎か!!」 思わずツッコんでしまった。 「俺も御藤くらいのルックスしてればなぁ〜、御藤、黙ってても女寄ってくるんだろ?」 確かに自分から告白とかしたことは無いし、気が付くと常に女の子が周りにいるのは事実だ。 「バレンタインとか物凄かったんじゃね〜の?」 「芸能人じゃね〜んだから、そんなに貰ってね〜よ。」 「俺なんて母親と妹から貰っただけだぞ。砂間は?」 「姉貴から1枚。」 「で、御藤は?」 「あ〜っと、50くらいか。」 「な、な、なに〜!!ご、ご、ごじゅう〜!!」 鹿田と砂間は目をおもいっきり見開いている。「卒業前だったし義理ってのもあんだろ。」 「いいや、お前が貰ったチョコレートにはぜ〜ったい手紙が付いてたはずだ!! 裏切ったな御藤!!」 「何めちゃくちゃなこと言ってんだ!!冗談は丸刈りだけにしろよ鹿田!!」「いいよなぁ〜御藤は〜。」「まぁまぁ御藤君、鹿田君はよっぽど羨ましいんだよ、僕だってそうだもん。」 砂間がまともなことを言ったような気がした。そこで 「砂間、チョコレートまだ大分残ってるから食べるんなら持ってくるぞ。」 「えっ、ホントに、いいの?」机の上の砂間の手に力が入っているのがわかる。「ああ、ただ置いといてもしゃ〜ないしな。」「おっ、じゃあ俺も頼んでいいか?」「ああ、鹿田にも持ってくるから心配すんな。」 「いやぁ〜、さっすが御藤!!太っ腹〜!!」 「おめぇ〜は話しが忙し過ぎてウルセ〜よ!!」 「またぁ〜、こうしてクラスメートになったのもなんかの縁なんだから、俺を捨てんなよ御藤〜!!」 「いつからお前は俺の所有物になったんだ!!」 砂間に目をやると、ほっぺたに人間の顔では見たことの無い猫のヒゲの様な三本のしわを浮かべながらまたニヤ〜っとした。「コイツはホントに人間なのか?」一瞬だがマイナス30度の世界の感覚がした。 なんかこうして話してると、それまでの劣等感が薄れてゆくようで「こういうのも結構アリな感じなんかなぁ〜。」と思ってしまった。 この先どうなるのかわからないけど俺は確かに、札幌私立政外高等学校での一歩を踏み出した。 春編へ続く

現在、春編をまとめ中です。春夏秋冬で二年、三年編に続けれればと思います。

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