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第82話:実地という場所


教室の空気は穏やかだった。


魔術理論の講義。


王立式の増幅構造。


板書に整然と並ぶ数式。


アルノーは静かに見ている。


理論は美しい。


だが。


ふと、前列の生徒の会話が耳に入る。


「卒業後は騎士団か?」


「いや、俺はギルドだな。」


「冒険者か?」


「実力主義らしいぞ。」


ギルド。


その言葉が残る。


講義が終わり、廊下を歩く。


掲示板に紙が貼られている。


“学園在籍者、ギルド登録可”


小さな注意書き。


基礎魔力量測定あり。


ランクは規定通り。


特別扱いなし。


アルノーは立ち止まる。


特別扱いなし。


悪くない。


灰棟で磨いた理論。


演習で一瞬だけ揃った刻み。


だが、あれは学園の結界内だ。


偶然と言われた。


再現できるのか。


外で。


学園は整っている。


結界。


規則。


安全。


だが現場は違う。


魔物は理論通りに動くのか。


刻みは読めるのか。


放課後。


街を歩く。


石造りの建物が見える。


傷だらけの扉。


冒険者ギルド。


中は騒がしい。


笑い声。


怒号。


鉄の音。


学園とは違う空気。


扉の前で立ち止まる。


自分は強くない。


魔力量も少ない。


三流貴族の三男。


工房でバイトしている。


何の肩書きもない。


だが。


観測型は、魔力量に依存しない。


刻みを読む。


揃える。


満月は一瞬。


それでも。


扉を押す。


中の視線が集まる。


受付へ歩く。


「登録を。」


副長らしき男が顔を上げる。


「学園生か。」


「魔力量測定。」


水晶が淡く光る。


弱い。


「Gランク。」


即断。


驚きはない。


予想通りだ。


奥から声。


「坊ちゃんか?」


大柄な男。


ギルド長。


「何で来た。」


アルノーは答える。


「理論が、現場で通用するか試したい。」


沈黙。


「三流貴族の三男です。」


「魔力量は少ない。」


「ですが、生き残ります。」


ギルド長が笑う。


「Gは雑務だ。」


「死ぬなよ。学園長に小言を言われるのはたまらない。」


副長が淡々と言う。


「評価は結果のみ。」


アルノーは頷く。


ここには理論はない。


刻みもない。


あるのは実地。


満月は。


現場でも満ちるのか。


その答えを確かめるために。

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