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第79話:満ちる瞬間



灰棟の模擬戦。


ガルドが前。


双子が左右。


ルクスが後方。


ルディスが観察。


アルノーは中央。


「来るぞ。」


ガルドが踏み込む。


衝撃。


アルノーが均す。


二瞬。


双子が動く。


だが敵役としている魔道具人形の動きが速い。


崩れかける。


アルノーは感じる。


刻みがばらばらだ。


ガルドは重い。


双子は軽い。


ルクスは流れる。


自分は均す。


揃わない。


――揃えようとするな。


ルクスの声が脳裏をよぎる。


揃う瞬間を選べ。


アルノーは呼吸を落とす。


踏み込み。


均す。


止めない。


刻みを読む。


ガルドの重心移動。


双子の逃げの癖。


ルクスの尾の揺れ。


ルディスの視線。


次の一拍。


そこだ。


均す。


内部標を、広げる。


一瞬。


全員の動きが噛み合う。


衝撃が流れる。


双子が斬り込む。


ガルドが押し切る。


ルクスが流し切る。


敵役が崩れる。


静止。


誰も声を出さない。


ほんの一瞬だった。


だが確かに揃った。


ルディスが静かに言う。


「今のは……」


ルクスが月を見る。


空に、丸い光。


満月ではない。


だが。


「満ちたな。」


ガルドが木剣を下ろす。


「一瞬だけな。」


アルノーは息を吐く。


位相標は固定ではない。


個々の刻みを尊重し、


揃う瞬間だけ、満たす。


満月は持続しない。


だが存在する。


三日月でもない。


半月でもない。


一瞬の満ち。


それを選ぶ。


アルノーは理解する。


自分は止める者ではない。


揃える者でもない。


観測し、満ちる瞬間を作る者。


灰棟は静かだ。


だが今、


確かにひとつになった。


ほんの一瞬だけ。

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