第78話:干渉
灰棟の朝はいつもより騒がしかった。
「今日は連携だ。」
ガルドが言う。
双子が前に出る。
「止めてみろ。」
「そのあと俺らが動く。」
アルノーは頷く。
内部標は安定している。
呼吸は四拍。
踏み込み。
均す。
止まる。
二瞬。
双子が同時に横から入る。
――噛み合わない。
衝撃が流れず、ぶつかる。
崩れる。
「合ってねぇ。」
双子が言う。
アルノーは息を整える。
内部標は揺れていない。
だが、双子の動きと重ならない。
ルディスが壁にもたれながら言う。
「位相標は内部だ。」
「他者とは共有していない。」
ルクスが続ける。
「お前の刻みは一定だが、俺らの刻みは違う。」
ガルドが腕を組む。
「個人標は孤立する。」
その言葉が刺さる。
アルノーは考える。
完全同期。
全員を同じ刻みに揃える。
――それは危険だ。
動きが硬直する。
王立式の重ねに近い。
「では、どうする。」
アルノーは小さく呟く。
ルディスが答える。
「全部揃えるな。」
「必要な瞬間だけ揃えろ。」
双子が笑う。
「合図を作れ。」
アルノーは理解する。
内部標は固定。
だが他者とは“点”で合わせる。
踏み込み。
均す。
止まる。
その瞬間、視線で合図。
双子が動く。
今度は噛み合う。
衝撃が流れる。
崩れない。
ガルドが一歩引く。
「今のは良い。」
アルノーは静かに言う。
「位相標は固定ではありません。」
「揃う瞬間を選びます。」
ルクスが尾を揺らす。
「局所同期か。」
ルディスが頷く。
「完全同期は硬直する。」
「だが局所同期は鋭い。」
双子が肩をすくめる。
「地味だが、厄介だ。」
アルノーは息を吐く。
止めるのではない。
揃えるのでもない。
揃う瞬間を作る。
位相標は孤立しない。
選択する。
灰棟の空気がわずかに変わる。
個が並んでいた場所が、
一瞬だけ、ひとつになる。
考えてみれば、満月に見えているのもひとときだ
だが、揃う瞬間は確かにある。
アルノーは木剣を握る。
内部標。
局所同期。
未完成。
だが確実に、深まっている。




