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第75話:尖りの理由



灰棟の朝。


昨日よりも空気が重い。


「来い。」


ガルドの声。


だが、今日は木剣を取らない。


代わりに灰棟の面々が輪になる。


双子。

四年の理論肌のルディス。

ルクス。

そしてガルド。


「なぜ俺らが手ぇ貸すか、考えたか。」


ガルドが言う。


アルノーは一瞬、言葉を探す。


「……灰棟は、磨く場所だから。」


双子が笑う。


「半分。」


ルディスが壁にもたれたまま言う。


「灰棟は“尖っている”場所だ。」


ルクスが続ける。


「王立式は正しい。」


「亜人式も正しい。」


「だが、正しいものは多い。」


ガルドが腕を組む。


「お前は、どれにも属さねぇ。」


沈黙。


「だから面白ぇ。」


即答だった。


双子が口を揃える。


「止めたからじゃない。」


「止め方が違った。」


ルディスが目を細める。


「王立式は厚みで受ける。」


「亜人式は流して殺す。」


「だが、お前は“均す”。」


「思想が違う。」


アルノーは静かに聞いている。


ガルドが木剣を地面に立てる。


「灰棟は、王立の落ちこぼれでも、亜人の余りでもねぇ。」


「主流から外れた理論の集積地だ。」


「実家の金がないものの集まりが正解だがな。」


「俺は体術だけで勝つ。」


「ルクスは流れを信じる。」


「ルディスは理論を疑う。」


「双子は逃げを磨く。」


「お前は止める。」


ルクスが尾を揺らす。


「異端は孤立しやすい。」


「だが灰棟では、異端は資源だ。」


ルディスが続ける。


「完成形より、未完成の方が伸びる。」


双子が肩をすくめる。


「止める式が完成したらどうなるか、見たい。」


「それがお前の王立学園での武器になる。」


ガルドが最後に言う。


「手伝う理由は簡単だ。」


「お前の理論が、俺らの理論を壊す可能性があるからだ。」


静寂。


アルノーは月を思い出す。


欠けている。


だが形は整っている。


「……壊すのではなく、均します。」


小さな返答。


ルクスが笑う。


「それが異端だ。」


ガルドが木剣を渡す。


「だから磨く。」


「面白ぇもんは、放っとかねぇ。」


朝日が差す。


灰棟は貧困寮ではない。


排除された場所でもない。


選ばれなかった理論の、実験場。


アルノーは木剣を握る。


一瞬の均衡。


それは一人では短い。


だが。


異端が重なれば。


世界は、少し揺らぐ。


ここから、本当に始まる。

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