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第70話:二つの式



入学試験から、あまりに早かった。


模擬戦。

面談。

灰棟。

実技。


気づけば、王立の式に囲まれている。


机の上に二枚の紙を置く。


王立式。


外周を重ね、補助線を増やし、厚くする。


安定。

持続。

増幅。


もう一枚。


亜人式。


単層。

補助線は最小。

流れは滑らか。


薄い。

だが濁らない。


アルノーは息を吐く。


「これが戦争の結果か。」


王立は王立の正義がある。


亜人式も完成されている。


だが。


あの家庭教師が教えたのは、どちらでもなかった。


削るだけでもない。


重ねるだけでもない。


どこか中間。


「……なぜ王立を否定しなかった。」


家庭教師は王立式を貶さなかった。


亜人式も否定しなかった。


ただ言った。


――整えろ。世界は美しいと信じろ。


それだけ。


杖を持つな、とも言った。


なぜか。


王立式は杖と相性がいい。


重ね式は増幅で完成する。


亜人式は杖を嫌う。


だが家庭教師の式は、どちらとも違う。


魔力を流す。


まず王立式。


揺れはあるが、持続する。


次に亜人式。


揺れは少ないが、持たない。


「……両方、極端だ。」


炭筆を持つ。


二つの式を並べ、重ねない。


ただ観る。


補助線の角度。

外周の張り。

内陣の密度。


「歪みは、どこで生まれる。」


魔力量が少ないから、すぐに破綻する。


だがそれは欠点か。


むしろ、揺れが見える。


多い者には見えないものが。


「観測すれば、何か見えるかもしれない。」


王立式をそのまま描き直す。


今度は亜人式も正確に描く。


改変しない。


否定しない。


まずは知る。


机の端に小さく書く。


王立式:厚みで安定

亜人式:流れで安定


そして空白。


家庭教師式:?


問いだけ残す。


月が窓にかかる。


まだ満ちていない。


だが形は整っている。


「急ぎすぎた。」


試験からここまで。


自分は目の前の事に意識を向けすぎていた。


「まだ、知らない。」


王立も。


亜人も。


家庭教師も。


そして自分も。


紙を閉じる。


明日は工房に行く。


亜人式を、直接聞いてみよう。


灰棟に戻ったら、ルクスにも。


「本当の亜人式を教えてくれませんか。」


それが言えるだろうか。


静かな夜だった。


だが問いは、はっきりと芽生えていた。

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