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第68話:第三王子の観測



王立魔導学園、A組棟。


最上階の窓から、演習場が見える。


レオナルト・アルヴェイン。


王国第三王子。


金髪。整った顔立ち。


杖は最高級。魔力も豊富。


だが彼は今、演習ではなく「観測」をしていた。


「……C組の最下位か。」


侍従が報告する。


「はい。魔術量F、体術E、理論SS。」


エドワルドは小さく笑う。


「極端だな。」


「危険思想の可能性もあるかと。」


侍従の声は低い。


「理論は既存式への修正提案。重ねを否定し、亜人型に類似。」


エドワルドは窓の外を見た。


亜人型。


「重ねないか。」


王立は積み上げる。


増やす。


重ねる。


王国そのものがそうだ。


城壁を高くし、兵を増やし、結界を厚くする。


亜人思想は危うい。


だが。


「……美しいな。」


無意識に呟く。


侍従が目を上げる。


「殿下?」


「重ねすぎた城は、重い。」


彼は杖を回す。


魔力が滑らかに流れる。


「均衡を取るという発想は、王立学園にはない。」


侍従は静かに言う。


「彼は三流貴族の三男。政治的影響力はありません。」


「影響力は後から生まれる。」


レオナルトの目がわずかに細まる。


「リュミエールはどう思った?」


「関心を示した様子。」


「そうか。」


それが一番重要だった。


リュミエール・セレスティナ。


王国最高峰の魔力。


満ちている象徴。


彼女が関心を示す存在は稀だ。


レオナルトは静かに考える。


王族は「安定」を守る。


重ねる側だ。


だが。


もし亜人型が主流となれば。


王立の式を均し始めたら。


それは革命になる。


「観測を続けろ。」


「監視ではなく、観測だ。」


侍従が頷く。


「承知いたしました。」


窓の外。


演習場に二人の姿が小さく見える。


満ちる者。


整えようとする者。


レオナルトは静かに呟いた。


「王国は満月を愛する。」


「だが月は、常に同じ形ではない。」


その言葉は誰にも聞かれない。


第三王子は、まだ動かない。


ただ見る。


王族とはそういう立場だ。


満ちているが、動けない。


だが彼の胸の奥にも、小さな疑問が芽生えていた。


――重ね続けることが、本当に正しいのか。

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