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第66話:一撃だけ



本日の授業でC組の模擬戦が王立式結界内で行われた。


外部的な魔法は禁止。


使用できるのは身体強化のみ。


木剣で有効打を一度入れれば終了。


勝敗よりも「資質」を見る授業だ。


セラフィナが告げる。


「体術の授業で聞いたと思うが、魔術師の最後は肉体に頼れ。」


当然だ。


体術のみ。


だが強化術は許可される。


アルノーの対戦相手は上背のある男子。


魔力量はEだが体術は上位。


「理論馬鹿か。」


軽く笑われる。


開始。


相手は正面から来る。


強化術を厚く重ねている。


足す型。


重い。


アルノーは薄く強化する。


最小限。


振幅を抑える。


軽い。


最初の打ち込み。


受けない。


流す。


重い一撃が地を打つ。


砂が跳ねる。


相手は押し込む。


魔力が多い。


強い。


だが荒い。


アルノーは呼吸を一定に保つ。


増幅しない。


跳ねない。


振幅を抑える。


二度目の打ち込み。


踏み込みの瞬間。


揺れた。


魔力が跳ねた。


足しすぎた。


その一瞬。


アルノーは踏み込む。


最小限の強化。


最短距離。


木剣の先が相手の脇腹を叩く。


乾いた音。


結界が反応する。


「有効打。」


終了。


ざわめき。


相手はすぐ立て直す。


三秒後。


重い一撃がアルノーの肩を打つ。


転がる。


勝敗は相手。


だが。


セラフィナは黙っている。


「どうやったか、説明してみろ。」


アルノーは息を整える。


「振幅が跳ねました。」


相手が眉をひそめる。


「何だと?」


「重ねた強化が過剰でした。」


アルノーは続ける。


「瞬間的に足元の安定が崩れました。」


沈黙。


セラフィナが言う。


「よく見ていたが、魔術量で押されたな」


アルノーは頷く。


ダリオンが笑う。


「一撃いいのがあったな。」


相手は不満げだ。


「勝ったのは俺だ。」


「そうだ。」


アルノーは頷く。


「強かったよ。」


それは事実。


均等は取るが、満月のように瞬間的。


三秒で崩れる。


持久戦は無理だ。


だが。


一瞬なら切り込める。


セラフィナが言う。


「瞬間最適。」


「だが継続不能。」


アルノーは頷く。


教官はそれだけ言う。


模擬戦は続く。


重い光。


厚い強化。


王立学園式。


アルノーの強化は薄い。


細い。


だが揺れない。


観客席の上段。


A組の数名が見ている。


リュミエールの視線が一瞬止まる。


均等を取るような美しい魔術式


無駄がない。


満ちてはいない。


だが。


鋭い。


彼女は何も言わない。


ただ見ている。


アルノーは肩を押さえながら立つ。


痛みはある。


だが確信もある。


足す者は強い。


均等を取るものは薄い


どちらが正しいかは、まだ分からない。

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