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第63話:満ちている者



A組の演習場は広い。


床の陣式は最新の王立標準。


重ねられ、補強され、磨かれている。


整っている。


「次、リュミエール。」


教官が名を呼ぶ。


リュミエール・セレスティアは前に出る。


長い銀髪。


背筋は真っ直ぐ。


魔力量測定では歴代最高値。


だが表情は静かだ。


陣を描く。


迷いがない。


重ねる。


補助。


安定。


教科書通り。


だが速い。


「発動。」


光が走る。


揺れない。


強い。


教官が頷く。


「模範だ。」


周囲の視線が集まる。


怪物。


天才。


そう呼ばれていることを、リュミエールは知っている。


だが気にしない。


ただ、与えられた構造を最適に組むだけだ。


「次、第三王子。」


レオナルトが前に出る。


王族。


魔力量は多い。


だが制御は粗い。


光が強すぎる。


少し揺れる。


リュミエールは横目で見る。


教官が言う。


「重ねることを恐れるな。」


リュミエールは静かに頷く。


正しい。


様式美よりも安全。


強さよりも秩序。


それが王立。


だが。


ほんの一瞬。


胸の奥に、微かな違和感。


以前、丘の上で言われた言葉が胸に残る。


誰だったかは知らない。


だが。


少しだけ、気になった。


リュミエールは空を見る。


昼の空。


月は見えない。


ただ。


どこかで、別の流れが生まれている。


そんな予感がした。

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