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第60話:足す者たち



魔術実技の授業は、第二演習場で行われた。


石床に刻まれた基礎陣。


均一な円。


均等な補助線。


王立標準式。


教官は中年の男だった。


「体術を試験に入れた理由は理解しているな。」


数人が頷く。


「魔術師が最後に頼るのは肉体だ。」


教官は拳を握る。


「魔力で強化した肉体の一撃は、術式より速い。」


ダリオンが小さく頷く。


エリオットは少し緊張している。


「今日は王立標準式の強化術だ。」


黒板に描かれる多重円。


一重。


二重。


三重。


「王立は“重ねる”。」


教官が言う。


「干渉を抑え、安全性を確保する。」


円の外側に補助陣を足す。


さらに安定陣。


さらに制御符。


「足して、足して、足して完成させる。」


C組は順番に陣を描く。


アルノーも描く。


だが、胸の奥に違和感がある。


重い。


無駄が多い。


「発動。」


生徒たちが一斉に魔力を流す。


光が揺れる。


一部は暴発。


一部は弱い。


アルノーは魔力を流す。


少ない。


だが発動はする。


重ね式は魔力消費が多い。


ぎりぎりだ。


教官が見ている。


「理論SS。」


低く言う。


「なぜ安定している。」


アルノーは一瞬迷う。


だが答える。


「できる限り、均等を取るように修正しました。」


沈黙。


「どこを。」


アルノーは陣を指す。


「外周補助の角度を微調整し、重ね陣の一部を省きました。」


教官の眉が動く。


「勝手に変えたのか。」


「無駄が多いと感じました。」


ざわめき。


ダリオンが呟く。


「何をしたんだ?」


エリオットが目を丸くする。


教官は近づき、陣を覗く。


発動させる。


光が静かに走る。


消費が少ない。


「……理屈は通る。」


低い声。


「だが王立標準ではない。」


アルノーは頷く。


「家庭教師に習いました。」


教官が目を細める。


「重ねないのか。」


「重ねます。」


アルノーは続ける。


「必要な部分だけ。」


「干渉する部分は削ります。」


教官は少しだけ興味を示す。


「亜人式か。」


アルノーは答えない。


「いや……違う。」


教官は呟く。


「亜人式より洗練されている。」


アルノーは小さく息を吐く。


家庭教師の教え。


自分の目で観測すること


魔力の流れが滞らないように、均等を取る。


「覚えておけ。」


教官が言う。


「王立学園は安定を優先する。」


「均等を取るなどという、様式美は二の次だ。」


演習が終わる。


体術との連動演習に移る。


強化術をかけ、木剣で打ち込む。


他の生徒は重い。


アルノーは軽い。


一撃は弱い。


だが速い。


ダリオンが笑う。


「軽いな。」


「魔力が少ないので。」


アルノーは答える。


だが教官は黙って見ている。


足す者たちと、


均等を取ろうとするもの


同じ場にいる。


王立学園の円は重ねられている。


アルノーの円は静かだ。


授業の終わり、教官が言う。


「理論SS。」


「その理屈を説明しろ。」

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