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第54話:王立の責任



王立魔導学園の入学式は、簡素で厳粛だった。


白塔の前庭に新入生が整列する。


人数は120名。


男女はほぼ半々。


貴族も平民も、衣装の差はあれど列は同じだ。


王族の血を引く者もいると噂される。


だが列は崩れない。


壇上に学園長が立つ。


白髪の老魔導士。


声は低く、よく通る。


「王立魔導学園へようこそ。」


静寂が広がる。


「諸君に与えるものは多い。」


「だが、求める者にだけだ。」


風が止まる。


「学びを求める者には、無限の道が開かれる。」


「求めぬ者には、苦痛だけが残る。」


ざわめきはない。


「ここは王立だ。」


「平民も王族も等しく扱う。」


「身分を持ち込むな。」


声が強くなる。


「ここでは責任を持て。」


「王立学園の生徒であるという責任を。」


短い。


だが重い。


式はそれで終わる。


移動の途中、声がかかる。


「君が理論SSか?」


振り向く。


数人の視線。


「最下位でSSって本当か?」


「どこに住んでる?」


「灰棟です。」


空気が一瞬だけ止まる。


「ああ……第三寮。」


言葉は柔らかい。


だが温度は下がる。


「なるほどな。」


距離ができる。


「理論は机上だ。」


誰かが言う。


アルノーは黙る。


測られることには慣れている。




C組の教室は三階の端。


男女比はほぼ半分ずつ。


貴族もいれば、平民出身もいる。


席は無作為。


身分による分けはない。


担任が入る。


「C組担任、セラフィナだ。」


短髪の女教師。


無駄がない。


「ここは基礎徹底組。」


黒板に三つ書く。


魔術量

体術

理論


「この1年は基礎に励んでもらう。」


「落第はある。」


「年二回の定期試験。」


「総合演習で加点。」


「学年末にクラス替え。」


淡々とした制度説明。


「上に行くのも、落ちるのも自分次第だ。」


教室は静かだ。


混沌としている空気。


まだ揺れている。


隣から声。


「灰棟?」


丸い顔の少年が笑う。


少し太っている。


制服がやや窮屈そうだ。


「エリオット・ヴァルク。」


柔らかい声。


「ヴァルク商会の次男だ。」


手は温かい。


もう一人が振り向く。


痩せた青年。


骨張った指。


目は鋭い。


「ダリオン・グレイヴ。」


「鍛冶屋の長男。」


「青棟。」


対照的だ。


一人は豊かさを抱え。


一人は火に削られている。


アルノーは答える。


「アルノー・ヴァレリウス。」


「灰棟。」


エリオットが少し身を乗り出す。


「理論SSだろ?」


ダリオンが腕を組む。


「すげえな。」


侮蔑はない。


純粋な興味。


アルノーは小さく思う。


この学園から世界を整える。

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