第48話:評価
長机の上に、受験者名簿が並んでいる。
魔力量の数値、体術の記録、水晶に保存された理論試験の映像。
王立魔導学園、第一会議室。
窓は高く、光は淡い。
「今年は多いな。」
一人が言う。
「受験者は1327名。」
書記官が答える。
「入学枠は120名。」
静かな数字。
削ることが前提の会議。
「まず魔力量基準を通過した者を抽出。」
水晶が淡く光り、数値順に並ぶ。
上位は安定している。
貴族の名が多い。
スカウト組の名も含まれている。
「スカウト十名は内定扱いでよろしいか。」
「問題ない。」
議論は短い。
すでに評価は済んでいる。
「体術。」
対戦映像が浮かぶ。
踏み込み、反応、間合い。
突出した者が数名。
順当に名が挙がる。
そして。
「アルノー・ヴァレリウス。」
空気が、わずかに止まる。
「魔力量、平均以下。」
「体術、有効打一、被打三。」
記録は平凡、いや劣勢。
「魔術理論試験。」
映像が映し出される。
基礎陣式。
しゃがみ込む少年。
修正。
再起動。
滑らかな発動。
「効率改善率、15.2パーセント。」
沈黙。
「再現実験済み。」
老魔導士が言う。
「誤差ではない。」
別の教師が眉を寄せる。
「既存理論に対する挑戦か?」
「そうとも見えるが。」
老魔導士は首を振る。
「既存理論の“補正”だ。」
「我々が見過ごしていた微差を拾っている。」
書類を指で叩く。
「量が少ないからこそ、無駄を削り、効率を上げる思考に向かった可能性もある。」
「だが、試験官の話では歪みを正しいと言った話もある。」
「それでは、様式美に拘っているということか。」
静かな議論が続く。
「問題は総合点だ。」
書記官が計算を示す。
魔力量点、体術点、理論点。
合算。
順位が浮かぶ。
120の枠。
境界線。
老魔導士が目を細める。
「……120位。」
ぎりぎりだ。
「理論がなければ、圏外。」
誰かが言う。
「魔術量が低い。」
「体術も伸びる保証はない。」
「だが誰が師についているのか、理論だけは伸びる可能性がある。」
別の教師が低く言う。
「この目は、学園に必要かもしれんし、これまでの伝統的な魔術に対する挑戦かもれん。」
老魔導士はゆっくり頷く。
「世界を美しい理論に導くか、学園の落ちこぼれになるか。」
会議は静まる。
「入れる。」
短い決定。
水晶に印が刻まれる。
アルノー・ヴァレリウス。
その名が正式に記録される。
「発表は十四日後。」
書記官が告げる。
その日まで、名は伏せられる。
窓の外では、王立学園の塔が静かに立っている。




