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第47話:14日後

少し修正しました



屋敷は、いつも通りだった。


門の鉄柵は朝露を受けて鈍く光り、庭師は左右の植え込みを同じ長さに揃えている。

食卓では皿が正確な間隔で並び、銀器は磨かれている。


試験があったことなど、家には何の影響も与えていない。


世界は静かに在る。


父は執務室から出ると、短く問うた。


「終わったか。」


「はい。」


それだけで会話は終わる。


結果を聞かれることもない。


長兄は書類に目を落としたまま言う。


「総合評価だろうが、魔力量と体術で落とすこともある。」


言葉は冷静だ。

家を継ぐ者としての現実。


次男は椅子にもたれ、指で卓を軽く叩いた。


「魔術理論は?」


「魔法陣の術式が少し歪んでいました。」


その一言で、次男の目がわずかに細くなる。


「悪目立ち。」


責める響きではない。

どこか面白がるような色がある。


「効率は上がりました。」


「どれくらい?」


「……少し。」


曖昧な答え。


数字は言わない。


言う必要もない。


次男は小さく笑った。


「学園は、そういうのを嫌うこともある。」


それは忠告か、経験か。


アルノーは答えなかった。


その夜、じいやが茶を運んでくる。


「発表は14日後、と。」


「各家への封書と掲示がその2日後だそうです。」


じいやは静かに茶を置く。


「順位も出るとか。」


順位。


総合。


魔力量、体術、理論。


三つの数値が一つになる。


「14日、長いですな。」


「はい。」


短い返事。


窓の外を見る。


月は半ば欠けている。


14日の間、屋敷は変わらない。


父は領地の収支を確認し、

長兄は家臣と交渉を進め、

次男は王都への準備を整える。


アルノーだけが、何も動いていないように見える。


だが机の上には紙が広がっている。


魔法陣を描き、消し、また描く。


あの日の基礎陣式を思い出す。


まだ削れる。


まだ均等を取る方法があるはずだ。


「落ちたら、どうされますか。」


ある夜、じいやがふと問うた。


「冒険者にでもなります。」


迷いはない。


じいやは小さく笑う。


「若さまは、結果よりも形を気にされる。」


「無様な形は、見せていない。」


そう信じているし、そうであってほしいと思っている。


王都では噂が広がっていた。


「今年は受験者が多い。」


「理論で悪目立ちしたものがいるとか。」


名はまだ曖昧だ。


だが、波紋は確かにある。


屋敷は静かだ。


14日は、ゆっくりと過ぎていく。


そして、発表の朝が近づいてくる。


アルノーは窓を開ける。


冷たい空気が入る。


昼の空に月は見えない。


それでも在る。


結果も、まだ見えない。


だが、どこかに在る。


14日後。

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