第46話:帰る者
少し修正しました
試験終了の鐘が鳴った。
受験者たちは一斉に立ち上がる。
歓声もあれば、沈黙もある。
深紅の外套の少年は、振り返らなかった。
アルノーもまた、振り返らない。
石造りの廊下を歩く。
試験は終わった。
だが、何も終わっていない。
門を出ると、王都の喧騒が戻る。
じいやが静かに隣を歩く。
「終わりましたな。」
「はい。」
それだけ。
体術で負けた。
魔力量は低い。
理論では、試験官の目が変わった。
だが合否はまだ分からない。
「悔いはございますか。」
じいやが問う。
アルノーは少し考える。
「量は変えられません。」
正直な言葉。
「体は、整えられませんでした。」
だが、そこで止まる。
「魔法理論はまだ余白があり、可能性がある。」
じいやが小さく笑う。
「若様らしい。」
王都の門を出る。
馬車は使わない。
来た時と同じように、徒歩で帰る。
遠くに学園の塔が見える。
大きく、動かない。
自分がどうであれ、あれは在る。
「発表は14日後、と申しておりましたな。」
「各家への通知は14日後で、掲示はその2日後。」
じいやが補足する。
「順位も出るとか。」
順位。
総合評価。
量、体術、理論。
どれも測られた。
「落ちても、終わりではありません。」
じいやはそう言う。
慰めではない。
事実として。
アルノーは頷く。
空を見る。
昼の空には月はない。
だが、在る。
自分の中の確信もまた、まだ在る。
世界は美しいはずだ。
だからこそ、証明もできるはずだ。
屋敷が見えてきた。
父は結果だけを問うだろう。
長兄は現実を語るだろう。
次男は静かに笑うだろう。
その前に。
アルノーは足を止める。
振り返る。
王立学園の塔は、遠くに小さくなっている。
「……無様ではなかったはず。」
小さく呟く。




