第43話:有効打
広場の奥に、円形の演習場がいくつも並んでいた。
それぞれの外周に、淡い光の膜が張られている。
結界だ。
係官が声を張る。
「体術試験は対戦形式で行う!」
ざわめきが広がる。
「ただし!」
その声が、場を引き締める。
「魔術の使用は禁止!」
「肉体強化も禁止とする!」
結界が淡く強く光る。
「内部では魔力は制限される!
身体強化も、術式補助も不可!」
受験者の間に緊張が走る。
「使用武器は支給品から選べ!」
演習場の脇に、武器が並ぶ。
木剣。
木槍。
短剣。
棒術用の杖。
刃はない。
だが当たれば十分痛い。
「勝敗で合否は決まらん!」
その一言で空気が変わる。
深紅の外套の少年が眉をひそめる。
「有効打を入れれば終了!」
係官が続ける。
「有効打とは、致命に至る一撃と判定されるもの!」
つまり。
一撃で終わる。
だがそれは勝利ではない。
「見るのは“素質”だ!」
その言葉が静かに落ちる。
「踏み込み。間合い。反応。判断。」
「力だけではない。」
アルノーは演習場を見る。
結界の膜は均一ではない。
波打つように張られている。
深紅の少年が近づく。
「魔力量が平均以下であれば、体術も平均以下だろ。」
口元に笑み。
「無様を晒すなよ。」
アルノーは武器の列を見る。
木剣に手を伸ばす。
重さを確かめる。
柄の微妙な歪み。
重心のずれ。
「……歪んでいる。」
じいやが先ほどのアルノーの言葉を静かに言う。
「坊ちゃまは槍の方がよろしいのでは。」
アルノーは首を振る。
「距離を測りたいので。」
木剣を握る。
対戦は勝敗ではない。
一撃を入れるか。
入れられるか。
そこに“素質”があるかどうか。
係官が番号を呼ぶ。
「アルノー・ヴァレリウス!」
名が響く。
続いて。
深紅の少年の名が告げられる。
周囲にざわめき。
「神様は意地悪なやつだよ。」
「これはかわいそうだ。」
「終わったな。」
アルノーは結界の前に立つ。
一歩踏み込む。
空気が変わる。
魔力が静かに押さえ込まれる。
身体強化は禁止。
純粋な体だけ。
深紅の少年が剣を振る。
速い。
迷いがない。
だが。
右肩がわずかに下がる。
踏み込みの前に、足が一瞬止まる。
「素質を見る、か。」
アルノーは小さく息を吸う。
係官の声が落ちる。
「始め!」
二人が同時に動いた。




