表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/46

第16話:揺れの中の形



午後の庭は、風が出ていた。


強くはない。けれど止まることなく、枝から枝へと流れていく。


アルノーは書庫を出たあと、足の向くままに庭へ出ていた。


木々の葉が揺れている。


同じ動きは一つもない。


右へ傾いたかと思えば、次の瞬間には戻り、また別の葉が遅れて揺れる。


ばらばらだった。


本来なら、落ち着かないはずの光景だった。


揃っていないものは、どこか不安定に見える。


そう思っていた。


けれど——


しばらく見ていると、不思議と目が離れない。


「若様?」


振り向くと、じいやが少し後ろに立っていた。


「風が気になりますか。」


アルノーは小さく頷く。


「揃ってないのに……変じゃない。」


思ったままを口にする。


じいやは木々を見上げた。


「自然とは、そのようなものかもしれませんな。」


アルノーは枝の動きを目で追う。


揃っていない。


それは確かなのに、なぜか崩れて見えない。


理由が分からない。


それが、少しだけ落ち着かなかった。


「……どうしてだろう。」


じいやはすぐには答えない。


風が二人の間を通り過ぎる。


「すべてが同じであることだけが、整いとは限りません。」


アルノーはその言葉を聞き、少しだけ眉を寄せた。


整い。


だが目の前の光景は、やはり揃ってはいない。


「でも……」


言いかけて、やめる。


うまく言葉にならない。


ただ一つ、はっきりしていることがある。


自分なら、もっと揃えたくなる。


そのほうが、きっと静かだ。


それでも、この揺れはどこか収まって見える。


「……まだ、分からない。」


正直にそう言った。


じいやは微かに頷く。


「分からぬまま見続けることも、大切でございます。」


アルノーはもう一度、枝を見る。


揃っていないものが、なぜ崩れないのか。


答えはまだ遠い。


けれど、その問いだけが静かに残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ