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第15話:並べてみる



書庫は、いつもと変わらず静かだった。


高い窓から落ちる光が、机の上に柔らかな四角を作っている。


アルノーは椅子に座り、二冊の本を並べていた。


一冊は、学園の入門書。


もう一冊は、屋敷の倉で見つけた古い記録だった。じいやが探し出してくれたものだ。


頁を開く。


入門書の図は、どこまでも整っている。


線の太さも、間隔も、中心も。


揺れがない。


次に、古い記録を見る。


描かれている魔法陣は、どこか不揃いだった。


線はわずかに曲がり、円はほんの少しだけ傾いている。


アルノーは何も言わず、二つを見比べた。


長い間、そうしていた。


「気になりますか。」


じいやの声がする。


アルノーは頷く。


「どっちも、使えたんだよね。」


「ええ。」


「でも、違う。」


じいやは否定しない。


アルノーは指で入門書の図の近くをなぞる。


触れはしない。


ただ、形を追う。


それから古い陣へ視線を移す。


「どうして、揃えなかったんだろう。」


じいやは少しだけ考えた。


「揃っていなくとも、足りていたのかもしれません。」


足りていた。


その言葉は、どこか静かだった。


アルノーは小さく息を吐く。


足りているのなら、それでいいのだろうか。


しばらくして、ぽつりと言う。


「……きれいな方が、いいと思う。」


それは願いに近かった。


じいやは微かに目を細める。


「美しさを求める心は、大切でございます。」


肯定でも否定でもない声。


アルノーは再び二つの図を見る。


揃った形と、揃っていない形。


どちらも世界に存在している。


窓の外では、風が木々を揺らしていた。


葉はばらばらに動いているのに、不思議と全体は静かに見える。


その様子を眺めながら、アルノーは思う。


揃っていないものの中にも、形はあるのかもしれない。


まだ、よく分からない。


分からないまま、視線を落とす。


二つの図は、変わらずそこにあった。


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