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第107話:共同実証の召喚


王立魔導学園の学務課。

その窓口は、かつてない緊張感に包まれていた。アルノーが提出した一通の申請書が、学園の既成概念を根底から揺さぶっていたからだ。

「……第三寮(灰棟)の住人全員による、共同実証演習だと? ヴァレリウス、ふざけるのも大概にしろ」

窓口の職員が、叩きつけるように書類を放り出した。

「学術発表演習は、個人の研鑽の成果を示す場だ。ましてや、身元の知れぬ寮生たちをぞろぞろと引き連れて登壇するなど、前代未聞だぞ」

周囲にいた他クラスの生徒たちから、嘲笑が漏れる。だが、アルノーは表情一つ変えず、その静かな視線を職員に向けた。

「私の『理論特別評価(SS)』には、既存理論の不備を指摘し、その再現性を公に証明する責務が含まれています 。現在、監視院が主導している『公式陣』が各地で自壊している事実は、既にご存知のはずです 」


アルノーの声は淡々と、しかし鋭く核心を突いた。

「私の理論は個人の魔力に依存するものではありません。魔力、身体、空間。異なる『位相』を持つ他者との同期こそが本質です 。それを証明するには、ここに記した協力者たちが必要不可欠なのです 」

アルノーの背後には、威圧的に腕を組むガルド、眼鏡の奥で冷徹に計算書をめくるルディス、そして影のように佇むルクスと双子が控えていた 。その光景は、端から見れば「異端の集団」そのものだった。

職員がなおも拒絶の言葉を吐こうとしたその時、廊下の奥から迷いのない足音が響いた。


「――私が許可しよう。学務課」

現れたのは、第三王子レオナルト・アルヴェインだった 。その傍らには、監視院の筆頭官も苦渋に満ちた表情で従っている。「彼らに課されたのは『実証責任』だ。王立が管理しきれなかった理論を、彼ら自身に証明させる機会を奪う理由はない 。

ヴァレリウス、その代わり無様な姿は見せるな。管理を越えた先にある『真実の円』を、我々に示してみせろ 」王子の直々の言葉に、職員は膝を突き、受理の印を押し倒した。その日の午後、掲示板に前代未聞の演習プログラムが張り出された 。


『理論特別評価実証演習:第三寮共同研究・位相均整の理』


「……やるか、アルノー」

ルクスが静かに尾を揺らす 。ガルドが木剣を握り直し、ルディスが不敵に笑った 。

学園の「死角」に追いやられていた者たちが、アルノーという位相標しるしを中心に、王立という巨大な円環へ挑戦状を叩きつけた瞬間だった 。

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