第1話 転生!?
第1話
俺の名前は無男。運の無さ男だ。
絶妙についてない男。いや、絶妙という表現は優しい。俺は、究極に運がない。今日だって、16歳の誕生日を迎えたばかりだというのに、こんな夢を見る始末だ。
夢の中の俺は、どこかの空き地で隕石にぶつかって死んだ。
死んだ俺の前に現れたのは、光り輝く謎の男。そいつは「君を殺してしまった。とても運の悪い男だな」と言い、俺に自分の運を分け与えると言った。そして「君と僕とは運命共同体になるんじゃ」とかなんとか、よく分からないことを言っていた。
日本の平和を守るとか、幸運マンとか、エッチ度69とか、意味不明な言葉が並んでいた。
俺は戦うことになったらしい。魔王バサモスとかいう奴を倒すために。報酬はたったの100万。
「ほんとにくだらねぇな」
そう思ったところで、目が覚めた。
「無男、起きなさい!」
お母様の声だ。
俺はベッドから起き上がり、鏡を見る。いつもの、平凡な顔がそこにあった。
よかった、夢だ。隕石も、幸運マンも、日本の平和も、すべてが夢だったのだ。
俺は安堵し、今日の予定を思い出す。
16歳の誕生日。王様への挨拶。
そう、この世界では16歳の誕生日に、王様に挨拶をするのが習わしなのだ。
今日は王城へ行かなければならない。
朝食を済ませ、母に見送られながら王城へと向かう。
俺はごく普通の一般市民。王様に挨拶するなんて、緊張する。
歩いていると、すれ違う人たちが俺を見て、コソコソと囁き合うのが聞こえた。
「おい、あれだ。例の」
「眠っているし、屍のようだぞ」
「ほんとについてないな」
なんでだ。なんで俺はこんなにも不運なんだ。
王城の門をくぐろうとしたその時、背後から馬車が暴走してくるのが見えた。
俺は間一髪で避ける。
「おい、避けろよ!」
御者の怒声が聞こえる。
避けて何が悪いんだ。俺は、また運が悪かったのか。
そう思っていると、王城の門から、厳重な警備に囲まれた男が歩いてきた。
その男は、俺を見て微笑んだ。
そして、その顔を見た瞬間、俺は思い出した。
夢の中で、俺を殺し、俺に幸運を分け与えると言った男だ。
男は俺に近づき、俺の肩をポンと叩いた。
「なおちゃん!」
男は満面の笑みで、俺に話しかける。
「君はマイナーなゲームの主人公になってしまったようだのう」
俺は混乱する。どういうことだ。ここはゲームの世界なのか?
男は俺の胸元に手をかざし、ステータスとやらを呼び出した。
主人公:無男
レベル1
HP:22
攻撃力:10
守り:8
魔法攻撃:12
魔法守り:7
頭の良さ:3
性格の良さ:2
運の良さ:0
エッチ度:69
男は俺のステータスを見て、満足そうに頷く。
「こっ、これは…!エッチ度、つよいぞう!君は大成する。断言できる。この世界は子作りしてほしいちょ」
そう言って男は、けたけたと笑う。
俺は呆然としていた。夢だと思っていたことが、現実になっている。
男は笑いながら俺の肩をもう一度叩く。
「ま、頑張って魔王バサモスを倒してな。わ、私は、王様だから戦えないのじゃ」
そう言って男は、財布から札束を取り出し、俺に手渡した。
「ま、100マソくらいあげよう。命かけてくれるのだからな」
男は、俺を置いてさっさと王城の中に戻っていく。
そして最後に、振り返って俺に言った。
「変身の能力があるぞ。もしかしたら、もしかするかもな。ま、バサモスを倒してほしいちょ。米を盗られて困っているのじゃ」
俺は、王様の背中を見つめながら、手に握られた札束を見つめる。
そして、小さく呟いた。
「俺は…戦うことになった。運悪い…」
物語の始まりは、絶望だった。