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水喰い  作者: GNIEBNAMUH
5/7

5 喰われた記憶

祖母の言葉を胸に、悠真は家に戻った。

だが、心の奥底で何かがざわめいていた。


その夜、眠りにつくと同時に、奇妙な感覚に襲われた。


――身体の中で、水が流れる音。

――冷たい水が、骨の奥まで染み渡るような痛み。

――誰かの声が囁く。

「おかえり、悠真……」


目を開けると、薄暗い井戸の底にいた。

水面は揺らぎ、彼の目の前に、あの少女――遥の顔が浮かぶ。

白いワンピースを着て、だが顔はところどころ歪み、目は不気味に輝いていた。


「ここは……?」


「ここは、わたしの世界。あなたの中。」


悠真は慌てて目を閉じたが、夢は消えなかった。

次第に、彼の記憶が溶け始める。

子供の頃の思い出、両親の顔、笑い声。

それらが水のように流れ、代わりに遥の記憶が流れ込む。


彼女の痛み、孤独、絶望。


朝、目覚めると体はだるく、頭は重かった。

鏡を見ると、目の色がいつもより薄く、ぼんやりとしていた。


日々、水を飲むたびに、身体の中で何かが失われていく感覚。

そして、誰かに見られているような、背筋の寒くなる視線。


悠真は気づき始めていた。


「このままだと、僕は……」


部屋の隅で、小さな水たまりがひとりでに揺れていた。

その中心に、鮮やかな緑色の瞳が光っていた。

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