深海にて
すぐにレイに男が近づいた。
「レイメンさんですか?サインをお願いします」男は書類を差し出した。彼女はそれを読み、署名した。それは船の貨物引渡書だった。
「ありがとうございます。デイモン・ブレイク船長はどちらに…」男は書類に目を落とした。
レイメンはそちらの方を指さした。
「ありがとうございます」男はそう言って立ち去った。
レイメンは貨物船のそばで待っていた。荷物を運ぶ作業員の中には、彼女を軽蔑の目で見る者もいた。気にしない者もいた。しかし、彼女は全く気にしていなかった。時折、小さな魚を積んだボートが街へ入ってくるのを見ていた。小さなボートは上へ行く道が開かれていないので、わずかなもので満足しているのだ。
「またこの街か。水の上に建つ、古くて崩れかけた家々、カビや苔の生えた店。ほとんど壊れかけているボートや船。下を泳ぐ巨大な魚と漆黒の闇。うんざりだ… あいつらはまだあそこにいるのか?」彼女は船を見て、懐中時計を見た。考え事をしているうちに、レイは誰かが近づいてきたことに気づかなかった。
「再度、ご挨拶申し上げます。お待たせして申し訳ありません。ご案内できます」背後から声がした。航海中につけられた護衛の一人だった。
「ごきげんよう、行きましょう」レイは答え、懐中時計を再び見て、街の奥へと歩き出した。二人が彼女に続いた。
彼らは無言で歩いた。足音と古い板の軋む音が、暗い路地に響き渡るだけだった。彼らの横を、音もなく船が通り過ぎ、そのシルエットは漆黒の闇にほとんど見えなかった。いくつかの通りでちらつく街灯の薄明かりがなければ、簡単に足を踏み外して足を折っていただろう。遠くから、隣の酒場からマンドリンの優しいメロディーが聞こえてきた。その音色は、周囲の陰鬱な状況とは奇妙なコントラストをなし、まるで最も暗く、重苦しい場所でも、美しさや希望の兆しを見つけることができることを思い出させているかのようだった。
商品の店はすぐそこにあった。レイは入り口の前で立ち止まり、護衛に感謝し、別れを告げた。店は腐った杭の上に不安定に建っており、今にも水の中に崩れ落ちそうだった。中に入ると、彼女は店内を見回した。
広いホールには、建物を支える柱が林立していた。待合用のベンチがいくつか置かれ、巨大な注文カウンターがあった。店内は薄暗く、カウンターの上のオイルランプがちらちらと光っていた。空気は湿気と埃の匂いで重く、棚は様々な品で埋め尽くされていた。くすんだ銀や黒ずんだ銅の装飾品、古びた革装丁の古書、傷ついた楽器などが並んでいた。壁には、過ぎ去った時代の場面を描いた埃っぽいタペストリーが飾られていた。棚には小さな像や様々な食器が置かれていた。この店のすべての品は、まるで忘れ去られた歴史の断片のように、長い時を経て、誰かに発見され、再び命を吹き込まれるのを待っているようだった。
レイが到着した時、驚いたことにほとんど人がいなかった。遠くでクラークが数人の客の相手をしていた。彼らは彼に宝石類を売っていた。そして、デルグがカウンターでルーペを使って何かを調べていた。彼は47歳くらいの男だった。栗色の髪は長く、小さなもつれた三つ編みにされ、低い位置で結ばれていた。服装はいつも通り、目立たない質素なものだった。レイメンの他に、フリントとマルゴという従業員がいた。フリントはいつも書類に没頭しており、マルゴは元スリで、あらゆる小物の価値を知っていた。しかし、今日は彼らは来ていなかった。
「こんにちは、デルグ。来たわよ」レイは笑顔で言った。
「誰かと思えば!レイメン!商品の調子はどうだ?」
レイはカウンターに近づき、テーブルにバッグを置いた。
「これがサイン入りの小切手と報告書よ」彼女は書類を差し出した。「もちろん、商品もね」
彼女はバッグを開け、まずいくつかの小物を出し、次に布に包まれた品物を取り出した。それは絵画だった。
「戦争が荒れ狂っていた時に城にあった絵よ。おそらく100年から120年くらい前のものだと思うわ。偽物でないか確認したわ。作者フリックス・ウォルシュのイニシャルも、テクスチャも全く同じ。間違いなく本物よ」