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深淵へ

皆が慌ただしく動き出した。船室から荷物をまとめ、食料を急いで平らげた。しばらくして船は停止。間もなく、船の周囲の水がゆっくりと下がり始め、巨大な窪みを形成した。それは壮観な眺めで、四方から巨大な滝が現れた。船底の水だけが沈み込み、まるで巨大な門が開くかのようだった。しかし、それを制御しているのは船ではなく、ウヴァル=ナエミ王国の労働者たちだ。


水底からは巨大な魚たちが、威圧的な眼差しと不機嫌そうな表情でこちらを見ていた。初めて見る者は、鳥肌が立つだろう。しかし、やがて慣れてくる。彼らはこの都市の守護者だ。彼らの気に障ることがあれば、災いが降りかかるだろう。


都市ヴェステンマスは、上層の厚い水と下層の深淵の間に浮かんでいた。守護者たちの魔法だけが酸素ドームを維持していたが、それでも常に湿気に悩まされた。


船はゆっくりと海底へ向かう。水は徐々に船体を覆い、深く深く沈めていく。光はどんどん少なくなる。水の流れは船を酸素ドームへと導き、さらなる潜航のための酸素を供給する。ついに、水の力が船を酸素ドームの中に押し込み、乗組員の生命維持を確保しながら、深海へと進んでいく。


「あとは検査だけだ」レイはそう思い、積み荷の入ったバッグを握りしめ、成り行きを見守った。


船は目的地に到着。すぐに数人の者が降りてきた。彼らを人間と呼ぶのは難しい。ウヴァル=ナエミ王国の出身者たちだ。水中でなければ、彼らの特徴は耳と顎の下の彫刻だけだ。顔を上げなければ気づかないだろう。そして耳は、ほぼ半分に割れており、まるで蟹のハサミのようだった。一部では「海の妖精」とも呼ばれているが、彼らはそれを非常に嫌う。


「さて、今日は何がある?」男の一人がそう言い、レイと船長に気づいた。「ごきげんよう、レイメンとデイモン様。それとも船長と呼ぶべきかな?」彼はニヤリと笑った。


彼は中背の青年で、くすんだ赤褐色の髪を頻繁に掻き上げ、無造作にセットしていた。革のジャケットとズボンを身につけ、鍛え上げられた体格を強調していた。


エリックは自信家だが、それがしばしば鼻持ちならない傲慢さに変わる。彼は周囲に自分の業績を誇示することを厭わず、自分が一番だと証明することに執念を燃やしている。そのためには、必ずしもフェアな手段を選ばないことさえある。


彼はレイに向き直り、「船の点検で、前回みたいにお前の船酔いの残骸が甲板にないことを願うよ。覚えてるか?」と笑い、乗組員に船の点検を命じた。彼らは我先にと船内を駆け回り、点検を始めた。


「いい加減にして、ギルムート。」


彼は突然彼女の方を向いた。


「小娘が指図するな」と彼は言い、彼女の肩にかかったバッグをじっと見た。「今すぐ友人に、お前たちを通さないように言いつけてやる」と彼はエリアスを指さした。「そうすれば、ここで長い時間を過ごすことになるぞ」と言い、レイの耳にかかった髪を払いのけた。


彼女は身をかわして彼のそばを通り過ぎたが、ギルムートは諦めなかった。


「どうしたんだ。若い娘が夜に一人で歩くのは良くない」と言い、手を差し出した。


レイメンは彼を見て言った。「今日は恵んでやる気分じゃないわ。」


少年は呆然とし、周りは笑った。レイメンはエリアスに近づいた。中年で、少し太めで背が低い男だ。いつも不機嫌そうな顔をしていたが、根は優しい人だった。彼は入港許可の書類に署名と捺印をするはずだった。


「こんにちは、船の検査は終わったみたいですね。」彼女は数枚の紙を差し出した。「これが船の積荷の報告書です。」


エリアスはざっと目を通し、嗄れた声で答えた。「いいだろう、通っていいぞ。」


彼は署名と捺印をし、よろめきながら戻っていった。船を検査した者たちも去り、船は再び動き出した。


ついに船は港に着いた。離れた場所にいたドッカーたちがすぐに船を係留した。レイメンは最初に荷物と一緒に降りた。ドッカーたちは慎重に船倉から荷物を運び出し、次々と手渡していった。声と騒音が空気を満たし、緊張と喧騒の雰囲気を作り出した。輝くランプと灯りが、整然と並べられた海上コンテナと埃の立ち込める様子を照らし出した。埠頭の周囲には、小さな仕切りとともに、巨大な係船柱が建てられていた。


港は、街が呼吸し、本格的に機能する場所だ。労働者たちは疲労にもかかわらず、単調だが重要な作業を続けた。


船の乗組員たちは、自分たちの荷物が届けられ、適切な人々に引き渡されることを確信しながら、このすべての活動を見守っていた。街中に散らばる明かりの灯った窓が、水面の暗闇の中に光の点を生み出していた。音と光が暗い街を変え、活気を与えていた。

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