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絶望の世界に、光を   作者: しらつゆ
第四章 隣国・ミリステッド国 保護編
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第三十六話 魔術練習①


 


「リトル、すごく楽しそうね」


 私の隣には今日もルミナが座っている。

 

 魔術練習……の前に、私達は朝授業がある。

 二年間分の失われた教育を補うためでもあるし、ミリステッド国で生活するための教育でもある。


「そうかな?」


 まだルミナには私達の秘密をちゃんとは話していない。話すつもりはないのだけれど。

だからなのかそれを少しだけ忘れられるのだ。


 今日の授業は少し長い。


 いつものようにまずは生活。

そのあとは文章理解、国家言語交流、数学知識……なんだか難しそうな言葉が黒板の上に白い粉チョークで書かれている。


 早くアネモスのところ行きたいなあ……





 


 授業が終わると、頭が重く感じた。

 私の知らない高度な内容を一日で叩き込まれた。ここの教育はラリージャのものよりも高度で細かい。


 そして……初めて宿題というものが出た。

 

 文章理解に関する宿題。400字ほどの文章を要約するらしい。面倒くさい。正直……

 六歳になる前。普通に学校に通っていた時も宿題出ていたことあったけな……覚えて、いない。



「リトル、今日もお昼食べたら行くの?」

 

 席を立つとルミナが聞いてきた。

「もちろん、だってアネモスが善意で言ってくれたことだもの。彼女もきっと本当は忙しいだろうし」

 

 アネモスは私達にあれだけ尽くしてくれている。


 それに……看護係とかって言っていたかな……。もしそうなのだとしたらきっと忙しいはずだ。


「今日も私、行ってもいい?」

「いいよ」


 友達になったのだから置いていく理由もない。

正直ルミナがいてくれた方が助かる。

彼女は私と同じ光属性攻撃魔法の使い手だからだ。



 今日も昨日と同じように勉強して、テラスに行ってお昼を食べて、アネモスに会いにいく。

彼女が練習に付き合ってくれると言ってくれる以上はそうさせて貰おう。





          ✳︎



 

 さて、と。

 今日も同じように練習しているのならこの重い木扉の向こうに居るはずだ。


 昨日はここでこれを開けた時に吹き飛ばされたんだ。

だから慎重に……って

確認のしようがない。音がし無さすぎるからだ。


「開けて大丈夫かな?誰か中の様子見れる人とか……いないか」


 木扉の取っ手に手を掛けつつ、チラリと後ろを振り返る。


 スケールと目が合った。

すぐに彼の方から気まずそうに視線を外す。


「あ、いや……俺の目は現在の状況を透視出来るわけじゃないんだ……あくまで過去を見れるというだけで……」


 少し早口になりながら小声で説明する。


 そっかぁ……現在を透視して見れる訳ではないのか。

 

 他。ルミナも手を上げない。


「私は一般魔法もそこそこ使えるけど、目を使った魔術は習得していないんだ」

 

 ルティアもリアもそういう能力はない。


 仕方ない。気を付けて開けるか。


 恐る恐る開ける。

 風は――吹いてこない。良かった。吹き飛ばされずに済んだ。



「アネモス!来たよ!」

 

 ホールの中に向かって声をかける。さて、アネモスは……


「あぁ!リトル達、いらっしゃい。今日は授業、長かったのね」


 授業は長いけれどつまらなくはない。周りの友達と楽しく話しながらの授業が多いからだ。


「遅くなっちゃって、ごめんね」

 ルミナは言う。

「じゃあ、始めようか」


 と……アネモスの手の平が光った。

 次の瞬間には何か……いや、杖が握られていた。

 また知らない技だ。


「さて、リトルから順番にあなたの持っている魔術見せて!どのレベルなのか知りたいからさ」


 無防備に両腕を広げて私達の前に立つアネモス。


「えっ……?でも……」

 それ以外に方法は無いものなのだろうか。

 

 戸惑いを隠せず、お互い向かい合ったまま突っ立っていると、アネモスが苦笑した。

 

「大丈夫だよ、私強いから。それに結界もあるからさ」

「いや、そういうことじゃ……無くって……ああ、いやそういうことなんだけど」

 

 自分で言ってて訳わからなくなった。まあ、いいか。


「本当に大丈夫……なんだよね」

「うん!さぁ……来い!」


 アネモスの体の前に薄い膜が出現した。よし……


「あまねく光の結晶をここに宿し、光の弾を顕現せよ!『シャイニーボール』!」


 普通に詠唱を行い、光の弾を手から出現する。アネモスの作った膜に直撃する。


「うん、いいね。中々良くできてるよ!強度も十分だね」


 全力で褒めてくれた。よし、次は……


「身に宿る光の結晶よ!凶器の如く切り付けるものとなれ!『シャイニーカッター』!」


 次は三本のシャイニーカッターを打つ。

 これも的を外さず、アネモスの膜に当たった。


「うんうん……なるほど」


 アネモスの膜が消えた。私も伸ばしていた腕を下ろす。


「リトルちゃんはやはり、全ての魔術に詠唱が必要になってきてしまうのね」


 もう終わりでいいやというように私の方に歩み寄ってきた。

 

 え……?この二つ以外にも沢山技はあるのだけど?

 

 ただ自分の特性である光属性攻撃魔法であっても詠唱しなければ魔術が出せないというのは正しい。


「そうだけど……」

「それじゃ、時間かかっちゃうよね」

 アネモスはどこか揶揄うような口調で小さく笑みを溢す。

 

「それが問題なんだよ」


 今みたいな練習とか模擬戦とかいった場合には詠唱をしても良いし、むしろ正確性を高めるのならしたほうがいいとは思う。

だが、眼前に獣の牙やら鉤爪が迫ってきている時にいちいち詠唱なんかしていられない。


「リトル、魔術の原理はちゃんと分かってるのかな?」

「原理……?うーん……魔力を形にして……えーっと」


 そういえば、どうして詠唱するだけで使えているんだろうか。炎や水……その他の属性は詠唱しても魔術を発動することはできない。

やはり、特性が関係しているようにしか……


「原理がちゃんと分かっていれば詠唱なんて無くったって攻撃できるのよ。詠唱はあくまでサポートのための呪文。魔術は想像力!」


 想像……ねぇ。


 私は三年間という長い間外の世界に手を触れることが無かったから、現象とかもよく分かっていないところが多い。


「ただ、魔力の作りが生まれつき違う。それがいわゆる属性の特性として現れるんだ。それさえ無ければ正直想像力と原理の理解力で多くの魔法は扱える。水と炎だけ覚えやすいと言われる理由はまだ分かっていない」



 属性の特性って……そういうことだったのか。

 じゃあ、魔力は魔力でも私とスケール、ルティア、リアとは違うということなのか。当然アネモスとも違う。


「私は光属性は使えないから正直感覚とかは分からないんだけど……」

「じゃあ私教えるよ!」


 ……と、ルミナが顔を出してきた。


「私もアネモスに教えてもらったところあるけれど、君と同じ属性ならやりやすいと思うし……ね!」


 そっか。確かに……


「じゃあ、リトルのことはルミナに頼もうかな」


 アネモスは、じゃあ属性魔法は任せたっという顔でルミナの肩を優しく叩く。


「ねぇ、それはいいんだけど……私、炎とか水とかも使えるようにできるかな……?」


 アネモスの技、『風破刃雷』。光と水、炎は正直合わないけれど、別々に使うとて覚えておきたい。


「それは、魔力量に余裕があればできるかもしれないね。ただ覚えやすいというだけで練習すればできるというものではないからね」

「そうなんだ」


 私も少しは魔力量が上がった気はするものの、限界がどのぐらいなのかは正直言って分からない。



「さて、じゃあリア!ルティア!スケールも!私に魔術見せてちょうだい!」


 さて、次は三人の番なんだけど。


 

「俺とルティアは基本的に物理攻撃なんだ。魔術はあんまり……」

「そうなの……?魔術と物理攻撃を組み合わせたりとかは?」

「私は短剣に炎宿して戦ったりはするよ!」


 二人は物理攻撃を主流にしてもらっている。でも少しだけは使える。


「リアは?」

「私は中級ぐらいまでなら無詠唱でできるよ。でももうちょっと強い技も覚えたいかなっ!」


 杖を構えるふりをしてアネモスに腕を伸ばす。


「んーじゃあさ、みんなも飛べるようになってみようよ!あとさっき見せた収納、顕現。あれらは全部一般魔法だから訓練すればみんな使えるようになるんだ!」

「飛べるようになりたい!!」


 みんなもできるようになる、と言ったからか、リアは瞳を輝かせながらその場で飛び跳ね出した。

 確かに飛ぶってどういう感覚なんだろう。

 

 気持ちいいのかな?それとも怖いかな?

 でも私もアネモスみたいに飛びながら攻撃できるようになりたいな。


 ちょっと相手を上から見る感じで……ね……



 

「じゃあ、練習開始……!!」


 




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