side研究所5 思惑。闇に沈む。
時間軸が少し戻ります。
研究員の思惑を知りたい方用の間話です。読むと深まると思います。
短いです
――研究員視点――
なんでそこまでっ……
と軽く心の中で思うだけでも心臓が飛び跳ねる。そこにはいなくても常に血のような瞳が輝いているように見える。
降り頻る、毒の雨。
私も浴びれば多分死ぬ。支配に支配を重ねるから。それだけ体への負担は増大する。
研究所の窓から、国が沈んでいくのを静かに眺める。
外に居た多くの人が頭を抱え込みながら軒下へと移動しようとするが、それも叶わず倒れ込む様子を。
リトル達はどうしているだろうか。
今頃、どこかで体を震わせながら襲いかかる闇の風を受けていることだろう。
一緒にいるはずのソルフも例外ではない。
研究所から逃げたソルフは……長からの情報によるとまだ生きている。
だが彼もいつ殺されるか分からないという状況の中、体を震わせているに違いない。
それにここ最近ラリアの様子がおかしい気がする。話しかけても俯いてばかりいて、少し前までは真面目というほど真面目な彼女から笑顔が消えた。
そうか。
ラリアにとってソルフは同僚であり、一緒に研究を行ってきたパートナーでもある。
今は片割れになってどこにいるのかも分からない。
それは、そうなるよな……
「さぁ……て。これで俺たちの仲間も増えたことだ。これだけやれば、もはやリトル達に逃げ場はない」
研究所の天井にあるスピーカーから発せられる長の重い声に体が硬直する。
これ以上は本当に国が壊れてしまう。
SNVの存在を知らずに死ぬ方がまだマシかもしれない状況で。
このタイミングで報道をして。
暴走させて。
リトル達はまだ子供だぞ……
せいぜい成人になるまでは……
って、そういうわけにもいかないんだよな。
SNVの報道をしなかったとしても早いうちにどこかの病院の検査結果から判明してしまうだろうし。
さらにこの脅威から救うにはリトル達が居なければならない。
成人になるまで生かしておけばそれまでに国が……もっと言えば世界がウイルスに侵されて滅ぶ。
自然と私は長のやることは正しいかもしれないと思ってしまった。
リトル達にいくら睨まれようが、住民達がいくら暴走しようが関係はない。
私は研究員だ。
長のやることは、間違ってはいないんだ。
「全ての研究員に告げる。この後の戦いが、最後だ。いいな」
次が最後…………!?
つまり……そうか。
次で捕らえられなかったら、研究員の処分が始まるということか。
使い物にならない研究員はいないのと同然。
この研究所は上記の考えに満ちている。
逆らったら論外だが、例え逆らわなかったとしても成果を上げられなかったものは処分される。違反したものも同様に。
ミラサバも、リトルを逃した研究員も皆、殺された。
私は、私達研究員は。
こんな人生を歩みたかった訳ではない。
ただこうなった以上は覚悟ぐらいしているさ。
「仰せのままに」
――ラリア視点――
…………どうして、私がこんな役を……
握っていた右手を開く。黄緑色の眩しい光が薄暗い空間で輝く。
ソルフィアと共に作った髪飾り。
リトル達の前では反感を買うからと付けることはなくずっとポケットに入れていた。
改めて見るとソルフの温もりが不思議と感じられる。
ごめんな、ソルフ。
君は私が、
支配をかける。
でも、安心して欲しい。私はその顔を見て笑うようなことはしない。
他の研究員の中には冷たい瞳で見るやつもいるとは思うが、そんなことは気にするな。
いいか。
楽にしておけよ……
きっと、大丈夫だ。
ソルフなら、ソルフなら。
生きながらえる




