6 凛、ダンジョンの出現を目撃する。
これは、異世界の門だ! ダンジョンが出現する!
小さな点でしかなかった穴はもう直径一メートルほどにまでなり、まだまだ大きくなっていくようだった。
「凛っ! 早く離れて!」
唯は私に向かって叫ぶと、すぐに奏山先生にも呼びかける。
先生もランカーなだけあって即座に察した。
「皆さん! 急いで教室から出てください!」
私とクラスメイト達が廊下に出た頃、唯は頭上に雷の塊を作り上げていた。
もう教室の天井につくくらい巨大化した異世界の門に向け、それを発射。
唯はそちらに視線を注いだまま、次の雷球を生成する。
「今の内に避難を! あ、奏山先生は」
「はい! ダンジョンランクを確認して報告します!」
そう言いながら先生は廊下の非常ベルを押した。
次いで、横に備えつけられている受話器を取る。
『全校生徒へ! 全校生徒へ! 一年A組の教室にダンジョンが出現しました! 至急、体育館に避難してください! 至急、体育館に避難してください!』
学校中に奏山先生の声が響き渡った。
先生、やっぱり養成所で訓練受けてるだけにすごく動ける。普段のちょっと頼りない感じとは大違いだ。
他の教室からも生徒達が廊下に出てきていた。
奏山先生は別のクラスの担任に自分の生徒達を任せ、教室の外から門を監視する。私はその後ろについた。
「咲良さんも避難してください!」
「今は先生の近くが安全な気がして。さっき、唯はどうして門に雷を撃ちこんだんですか?」
「あちら側を牽制したんです。直村さんのあれがなければ、もうとっくに魔獣が出てきています」
「じゃあ、ダンジョンランクというのは? どうやって確認するんです?」
「最初に現れた魔獣を観察すれば、そのダンジョンの脅威度が分かるんです」
「え、だったら魔獣が出てくるまでここに……? 私も避難を……」
「もう遅いです! 私から離れないでください!」
異世界の門はすでに天井を突き破る大きさになっていた。
前に一人立つ唯は、依然見つめたまま微動だにしない。全意識を集中させているのがこちらにも伝わってくる。
やがて門から虎の頭が二つ同時に現れた。
二頭いるのかと思いきや、どうやら首元でつながっているようだった。驚くべきはそのサイズで、通常の虎の倍ほど大きいだろうか。
唯と奏山先生が同じタイミングで叫んだ。
「「フラムメウス!」」
見るからにやばい魔獣だけど、本当にやばい魔獣らしい。
即座に唯が準備していた雷球を放つ。
感電した双頭の虎はその動きを止めた。
この隙に唯は私達の方に振り返る。
「最悪だわ! Bランクだなんて! 先生すぐに報告を、ってどうして凛もいるの! とにかく先生達が離脱するまで私が何とかするわ!」
「ご心配なく! 私は機動力だけB級認定を受けています!」
奏山先生は廊下の窓に向かって手を伸ばした。
すると、発生した突風が綺麗にガラスを吹き飛ばす。
先生は私の腰に手を回しながら。
「しっかり掴まっていてください!」
注意喚起の直後には、もう私達はガラスのなくなった窓に飛びこんでいた。
外に出ると、今度は上方向へ。
これは……、風に全身を持ち上げられてる感じだ。私、空を飛んでる。
「先生の魔法ってもしや」
「はい! 風を操る力です!」
「こんなにすごいのにD級なんですか?」
「……はい。でも、逃げ足だけB級認定をいただいています」
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