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呆気なさと傍観






「し、知らない」


途端に口から出た物は先ほどあんなにも恐れていたあの虚言であった。しかし、偽せて答えるしか。それ以外には他に方法はないと判断して故に出た物だった。


金髪の青年は少し思考を巡らせているのか、間を置いてから此方を向いた。




「わかった。それじゃあお嬢さんの言うことを信じるよ」


ほっと安心して一息ついた瞬間。





急に頭がくらくらした───────────






「ボクがさっき言ったこと覚えてる?」




ナカラの夢の中、1人の少年が囁いてきた。



それは金髪の青年から尋ねられた相手、いや悪魔というべきであろう。




アガレスリだった──────




「心外だなあ。やっぱりボクの見込み違いだったようだねェ……」


声色を下げ、視線を落とし、自分はがっかりしているというふうに演出しているが明らかにそれは演技だ。何故ならば口角は上がっているのに気づいてしまった────たったそれだけでも、ナカラには判断できてしまうのである。




「答え合わせしちゃうとさ、あの後言ったじゃん」







アガレスリの口の動きが何を示しているのかが分からない。音も聴こえない。一瞬聴覚が悪くなったのかとさえ疑った。しかし、ここまで不自然にこのような事態に陥ることは有り得るのだろうか。





「あーあ、契約破棄だね」



これならお手上げだ、と言ったポーズをしながら相手はゆっくりと後ろを振り向く。








「必ずこれからキミは戻る。心残りがあるとしたら契約した以上、ボクをもっと信用して欲しかったね。利用してくれなくちゃ、迷惑だからさ」






















金髪の青年はするとはっと目を覚ました。



目の前には──ベッドに寝転んだ1人の少女が人形のような表情のない顔をしている。



黒髪ロングの、大正浪漫のようなワンピースで、珍しさを感じるよりも恐怖心やそれから意味深な方の疑問が頭の中で数々出てきた。








「オレは何をしていたんだっけかな……」



今までの自分が、見栄を張っていたことも何物かを追っていたと言う目的すらも忘れ。





彼は、何もしないままじっと少女を見つめた。









彼の忘却した存在により。

















視界は真っ暗になることを知らずに───────











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