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行き先



「利用するならボクはとことん利用するべきだと思ってるよ」


地上に降り立ち、ナカラと同じ目線に立つとさりげなく距離を縮めつつにっこり笑いかける。


「急に要らないもの扱いされるなんて厭、最初に約束したからにはそれぐらい守ってほしいねェ」




「……はあ」


「おっと。ため息をつかれるとは想像していなかったなあ」


目をぱちくりさせてナカラを見ているタレ目の瞳は吸い込まれそうなほど純朴に透き通った色で、催眠を掛けられたかのように感じてしまう。


もしかすればこの悪魔のことだし有り得るかもしれない。


先程相手にした反応と同じことをしたのに。





忘れたというのか。





いや、その反応自体が罠である可能性も──








「そこのお嬢さん、君は何をしている?」



ナカラが振り向いた先には金髪の青年が此方へゆっくりと歩んで来ているのが見えた。






一瞬、少女は混乱した。



この予想つかなかった展開の発生により悪魔との話を全部聞かれていた可能性から、怪しまれたという線しか想像ができない。



というかそもそもあの金髪の青年には





視えるのだろうか?




「実はここ辺りに用事があって出向いていたんだが、そのついでにお嬢さんが誰も住んでいない空き家に出向いては誰も居ないはずの空間に語りかけていると見うけ──」





彼の言葉に、本音はまずいと動揺しそうになっていたが少女は建前上平気というふうに強がって見せた。



沈黙を置きながら。






“大丈夫。ボクが保証する……ボクとの契約までもが強制的に排除されるわけじゃ無い”






目を瞑っていると、心を読んだかのようにそんな言葉が答えとして脳内に流れ込んでくる。




“どうしてか、知りたい?……そう、あの青年にはボクの姿は見えていないからだ”






考えは当たっていた。





「それじゃあ私について来てもらおう」




目の前にはただ手を差し出す。








そんな金髪の青年が居たからだ──






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