八話 阿波岡さきすの初配信②
「すごがったよ!魚井さん」
「ありがとうございます、黒遼さん」
「黒遼さんの言う通りすごかったわ」
「私もそう思います」
俺は魚井さんが配信を切りブースから出ると拍手をしていた。
「あ、そうだ、一曲歌ってみるね」
さきすを見ている人はさらに増え、十四万人が見ているさなかそんなことを言う。こんなにも人がきているのに歌を歌うことは少なからず批判する人がいるだろうと思っていた、はずだった。
「じゃあ、運営さんから許可得ているから、ノーヘルのオリジナルの『ノーヘルの神曲より』を歌うね!」
ノーヘルを知っているなら一度は聞いたことがある曲で、運営から出されている『ノーヘルの神曲より』は総再生回数は二億を超えるほど聞かれている。
俺は歌を聞くと共に配信に写っているコメ欄をみる予定だった。
「え?」
歌の初めを聞いた時、俺は思わず驚いてしまった。他の三人のそうだったみたいで、さらに近くにいた運営の人たちも驚いている。
思わずコメ欄を見ながら聞くのはではなく、ただ時々目を閉じたり、動いたりしている阿波岡さきすを見ていた。
コメ欄も曲が始まってから完全に動いていなかった。
そこから俺はただこの歌を聞いていたいと思い、集中して聞いていた。この曲は何回も聞いているから大体覚えているのに、なぜか違う曲に思えてきた。
あっという間に時間は過ぎていた。
「…ふう」
歌い終わり、さきすは息を吐いた。
それと同時にコメ欄がすごいスピードで動いていく。
「高スパチャ、ありがとう、天真爛漫さん、えーっと天使のような歌声でした、吸血鬼と疑ってすみませんって高スパチャの内容じゃないでしょって!!え?え?こんなにスパチャがきてるの?」
さきすはあまりにも多いスパチャに殴られている、赤い枠で書かれて高スパチャがどんどん流れていく。
あまりの多さにさきすは混乱をしており、
「はぁわわわー」
と可愛らしい声を出している。さらにどんどん加速していくスパチャの嵐に耐えきれず、
「スパチャの名前の読み上げは別の日にするから、もう配信切るからー!」
といい、配信を終わらしてブースからしばらくして出てきたのだ。
「次、沙羅頑張って」
「私も魚井ちゃんに乗じて頑張ります」
俺はその様子を見て、俺はダメだと思い始めてしまった。でも決して悟らせてはいけないと落ち込むようなことはしない。
はやり華なんだろうなー。どうせ男性はあまりなんですよ!次は水守さんか、さすがに見ないのは失礼なので次の水守さんの配信まで時間あるから、屋上に行こう。