四話 最終選考
「では、集まったな」
審査官がそう言う、俺を含め、Eランクダンジョン『小竜どもの跡地』の前に集合していた。
ここにいるのは第二次選考に受かった人のみで、最終選考はダンジョンに潜ることみたいだ。
『小竜どもの跡地』はノーヘルが買い取っているので俺も初めて入ることになるのでワクワクが止まらない。
「今回はパーティーで四階層まで攻略してもらう、もし合格した場合パーティーの仲間が同じ同期となる、そしてこちらでパーティーのメンバーを決めておいた、皆のスマホに何番かメールを送っておいた、なので今から審査員が番号を書いた看板を持つのでそのところに集合だ」
これか、俺はすぐにスマホを開き、何番か確認する。五番か…俺は五番と書いている看板を見つけすぐにそこに移動する。
どうやら一番の人たちは集まり、ダンジョンに向かっていた、もしかしたら順番に行く可能性がのあるので俺は五番のところに急いで向かった。
そして三人が先に待っていた。俺もその後ろに立っておくことにした。
「次、五番」
審査官から呼ばれ、俺を含めた四人でダンジョンに入る。
「まずは自己紹介をしておけ」
ダンジョンに入ってきた審査官から言われる。
俺から言うべきだ。そう決心して、
「黒遼だ、よろしく、一応Cランクの付与師だ」
そして続くように銀髪で青色の瞳をした美少女が言った、
「シハイル、よろしく、片手剣だ」
シハイルさんは片手剣と少し小さい盾を持っていた。
「水守です、よろしくお願いします、リッチです」
ふむ、魔法使いか、一体なんの属性を使うのだろうか。
「魚井、よろしく、見ての通り両手剣だ」
え?もしかして男子なの俺だけじゃないか!でもまぁ、こういう時って俺が気まずいんだよなー。
「じゃあ、さっさと行きましょう」
シハイルはんがそう言い、先頭を切っていった。俺たちもついていくことになった。
審査員と審査官が後ろから観察している、つまりパーティーの連携力が試されているのだろう。
「ゴブリンがきた」
先頭にいたシハイルさんがそう言う。じゃあバフでもかけますか、
「俊敏、力、耐久」
俺の付与は至って簡単、言った通りの効果がある。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
シハイルさんと魚井さんの近接の二人に感謝される、役割として当たり前なんだけどね。
すると俺の目の前では一方的に蹂躙されている、水守の活躍場面はなかったらしい。これは水守さんがかわいそう( ̄▽ ̄)。
そうして新パーティーでの初戦闘は呆気なく終わった。
「サンダー!」
「魔力増加、耐久、憎悪、治癒、力、俊敏、攻撃力増加」
「ぐぅ!」
「くぅ!」
フロアボスである小竜と戦っていた、正直どちらかが力尽きるかの勝負になっていた。
この小竜さえ倒せばクリアなのに。
「グァヮワワ!!」
小竜が叫ぶ、
「あ、」
俺は思わず声に出してしまう、最悪だ…。
審査官と審査員も俺がなにかに気づいたことに首を傾げていた。
「チ、最悪、シハイルさんと魚井さんはすぐに後ろに下がって!」
間一髪だ、シハイルさんと魚井さんは俺の言うことをすぐに従ってくれた、何者かからの攻撃が空をきった、俺はすぐに上を見上げると、
「やはり…」
「「「「「竜?!」」」」」
俺以外の五人は驚いた様子だ、審査官が驚いていることを見ると、小竜の特徴を知らなかったらしい。
「炎属性、ポイズン、マヒ、軟化、魚井さん、切ってください!」
俺は急いで炎属性を魚井さんの両手剣に付与し、残りを竜に付与した、すると竜は地面に落ちてくる。
「わかった」
地面に落ちてくる竜に向かって魚井さんが刃を振るうと竜は真っ二つになる、小竜は驚いて逃げていった。どこに逃げたかはダンジョン七不思議の一つだ。
こうしてクリアした。
俺はバフ以外はかける気はなかったが相手がBランクの竜ならば話は別だ。
「お疲れ様です、黒遼さん、最後の付与…」
ダンジョンを出ると審査官と審査員はいなかった、水守さんが話しかけてきた、
「さすがに実力で測っているのに、異常状態をかけて倒すのは少し違うと思ったから使う気はなかったんだけどね」
「聞いていい?」
シハイルさんが近づいてくる。
「なんですか?」
「なんで竜だとわかったの?」
これは答えていいのだろうか?もしかするとこのダンジョンの難易度が上がる可能性があるのだがな。
でも知りたがっているのだ。
「パーティーに所属していた時に、ダンジョン攻略中に敵の小竜が突如して叫んだことがあってその時に竜が現れたんだ」
「なるほど」
シハイルさんは表情を変えることはなかった。
そうして静かに帰路を歩むことになったのだが、シハイルさんと同じようで二人無言で途中町を通っている時に、
「あの時、ありがとう」
シハイルさんはふと呟くようにいってくる、静かだから俺の耳は正常でしっかりと聞こえた。
「気にするな」
「そう」
恥ずかしいのかシハイルさんは少し赤い。
「ハハ」
俺は気づいてしまった、あれのことについて。
「なに笑っているの?」
「いや、はは、なんでもない、いやーそれにしてもうまくやっていけるのだろうか」
「全く、というかすでに合格した気になっているの」
「それもそうだろうな」
こんなお通夜より少し静かではないが戦闘の時しか喋らないパーティーなんて同期でやっていけるのだろうか。
「黒遼さんはなんであの時魚井さんのみに付与したの?」
竜を倒した時か、失敗することを考えればシハイルさんに付与するだろうが、俺はしない、なぜなら、
「だって銀髪はキレイなままがいいから」
俺が銀髪が好きなのだ、だから、そう俺の中では結論ずけておく。
「魚井さんがこのことを聞いたらなんて言うか、全くこれだから…もしかして私をそんな性欲を満たすかのように見ていたということね?!」
シハイルさんは俺からさらに距離をとる。
えぇー、そんなことはない、別に戦闘ごとに『シハイルさんの銀髪、キレイでサラサラしているなー』なんて思って…いました。
「しかたなし、だって俺はまだ青年ですもの」
「え?十八歳じゃないの?」
「違うよ?」
「えぇー!」
シハイルは驚ている。やっぱし大人として見られていたんだ、(´;ω;`)、ここでもか…
「じゃあ、また」
「ああ」
そうして俺とシハイルさんは別れた。
シハイルは笑顔だった。なにあのかわいさ、でももし合格して一緒にやっていくことになったらのことを考えるとそういう変なことを考えてはいけないな。
俺はスキップで機嫌に乗りながら帰るのだった。
「ちくしょ!」
フラックがテーブルを叩く。
「まぁまぁ」
それを宥めるジウ。ここ最近、『嵐の王』の依頼達成率が落ちてきている。このままではAランクパーティーになってしまう。
この原因はすべてクローのせいだ。
「クローめ!」
完全に八つ当たりである、フラックは怒りの矛先をクローに向けているのだ。
エルザとジウは諦めて二人、一緒の部屋に向かっていった。
一人静かなになりフラックは怒り続けていた。