十三話 高橋ノウンの初配信
「お疲れ様です」
「ドール良かったですよ」
「良かったですけど…さすがに空気読めないは…」
「魚井さん、笑わないで、次、黒遼さん行ってきて」
「はいはい」
急かされ、俺はブースに入る。普段から自宅でパソコンを使い、配信する準備をしているのでいつも通りにしていく。
「これが俺か」
俺は一度、高橋ノウンとしてなり、動けるのか確認する。
高橋ノウンは悪魔のツノがあり、青と赤が交互間隔にある短髪で、茶眼である。
「よし、動けてる」
自己紹介のカードはって、今頃だけど、阿波岡さきす以外の二人、誕生日明かしてないじゃん。終わってから伝えておくか。
とりあいず枠を作って、ちゃんとミュートにしてっと…
「これでよし」
実はドールの配信は思った以上に時間がかかっており、二人目と三人目の二人が少し俺に迷惑をかけている。我慢しよう。女性の方が多いから、俺はあの四人の中では一匹狼にすぎないのだ。
【高橋ノウンの初配信〜すでに同期から嫌われました〈泣〉】
あとは時間までゆったり深呼吸しよう。最初の一言目が一番緊張するな。今までそんなことなかったのに…嵐の王の時は、Sランクに上がる条件の一つをクリアするために入っただけなので、手段にすぎないので緊張しなかったが、今回は手段ではないので緊張するに決まっている。
【Sランク昇格の条件〜四つ目〈パーティー〉】
・パーティーに入り、そのパーティーがBランク以上であること。
・パーティーにて役割があること
・パーティーで貢献していることが大きい
上記を満たし、他の条件を満たした際Sランク昇格となる。
こんな感じだったな。
おっと、もう時間か。
枠には五万と、四人の中で一番待機している人が多いことになった。
俺はミュートを解除する。
「どうも、ノーヘル所属の三期生高橋ノウンで、よろしく」
『ラストだ!』
『トリ、ファイト!!』
よしよし、いい感じだ。
「華華華の次だけれども、さっさと自己紹介やっていきまーす、ではドン!」
自己紹介を配信に映るようにしてちょうど良い大きさに事前にしていた。
【高橋ノウン】
役割…付与師とか後方担当、誕生日…9月17日、身長…175cm、好きなもの…銀髪、短刀、Vダン、育成ゲーム、ドラゴンのステーキ、嫌いなもの…遅刻、皿うどん
ノーヘルに召喚された悪魔、自由気ままにさせてもらっている。時々他のVダンを見ている。
「こんな感じ」
『なるほど』
『銀髪…同期であるさきすを…』
『中々すごい(死語』
「さすがに同期に『ハァハァ』とかしたら不祥事しか起こしかねないから、俺はそういった関連のことは起こすつもりはない」
『確かに』
『不祥事w同期からすでにへんな目で見られてそう』
この調子だ、自己紹介で結構とって最後で炎上すればコメ欄の罵倒から逃げれるぞ。
「全くもってその通りだ、Mさんの嫌いなものはどこぞの高橋って書かれているぐらいだからな」
『M、ドールじゃないかw』
『嫌われてて草』
「そして目標はただ一つ銀髪を愛でることだ」
『やばい目標』
『銀髪のVダンの人逃げてー!』
『問題児だろ』
「グハァハァ、逃げれると思うなよ!はい、ということでちょっとこの野球育成ゲームをしていきます」
『切り替え早!』
『目標から今日することへの入り方が雑すぎる』
『お!』
『わくわく』
俺はそのゲームを配信上に出して、サクセスをすることに
「最初に高校か、みんなはどれがいい?」
『十束高校』
『南十文字高校』
『世紀末II高校』
『ノーステンタクル高校』
この四校が多いな…よし、
「じゃあ、十束高校にしていこう、次に名前だな、えっーと捨台詞申でいいか」
『捨台詞申君w名前』
『どんな名前だよw』
『いやな予感しかしない…マイナスリ・ドール』
シハイルさんがコメントをしているな。あまりにもコメ欄が流れていくもんだからすぐに流されたけど。
「そういうことでやっていきましょう」
俺はそこから捨台詞申の育成を始めた。
「甲子園決勝か…勝ちにいくか…」
『コールド勝ちでここまで来たのに、なにを申す』
『それにしても強くなった』
『捨台詞が…ウッ、目から涙が…』
無事、捨台詞申君の育成が完了し、評価に入る。正直なんだっていい。
「お!最高ランクか」
『最高ランクか、すげぇー』
『おめ!500¥』
「初スパ、三好さん、センキュー」
そこから俺は次から次へと流れいくスパチャを読んでいく。
「ふぅー、こんな感じだな、お、もうすこし終わるかな」
俺は間を開けて、言う。
「俺は一応プレートがあるのだが見せます」
『なにぃ!』
『見せていいのか?!』
『これで高かったら驚く』
俺はサブ垢のプレートを一部だけ見せる。
【高橋ノウン】
Cランク、付与師
経歴…嵐の王のメンバーであった。
それのみを見せる。炎上というよりか有名になるだろうな。
「ではお疲れ様、また次の配信でー」
俺はコメ欄を見ずに配信を終わり、ミュートにする。
「ふぅー」
体制は座っていたので背中を伸ばす。
とりあいずブースから出るか。
「黒遼さん、お疲れ様です」
「お疲れ様ー」
「お疲れ様、魚井さんと水守さん、あれ?シハイルさんは?」
「そういえば見かけていませんね」
どこかにいったのかな?
屋上に向かうか。
「とりあいず話してくる、いつでも帰っていいの?」
「そうみたいですよ」
「テンキュー」
「お、いたいた」
やはりここにいたかシハイルさん。
シハイルさんは俺の声が聞こえていないのかフェンスに持たれたまま反応しない。
街の家々の光や月明かりが綺麗である。
「どうした?」
俺はシハイルさんに近づく。シハイルさんは気づいているのかいないのかわからない。
「ちゃんと報酬はもらうからな」
「どうして…どうしてクローだと言わなかった?」
どこか泣きそうな声で聞いてくる、しかしフェンスの方を向いているため顔は見れない。
「当たり前だ、というか報酬のためというか、そのために付け加えたからな、配信に、だから俺はクローだと言わない」
「理由になってない…」
「その通り、しかし俺はそうでしかない、シハイルさんはSランクになりたい、そう言った、その時、俺はクローであることを配信で言おうか迷った、結局はクローと明かしてしまったけど、それは…」
「理由になってない!!」
シハイルさんは近づいて俺の方に振り向きながら泣きながら言う。しかし俺はシハイルさんが泣いている理由がわかっていなかった。




