十二話 マイナスリ・ドールの初配信
「あ、おかえりー、黒遼さん」
「ああ」
水守さんが迎えてくれる。運営の方はどこかにいて、魚井さんが座って待っている。
「配信良かったですよ」
「時間かかりすぎましたけどね…シハイルさんはもうブースに入っていますので」
「わかった、ありがとう」
俺はブースの近くのベンチに移動し、スマホを取り出して、
『マイナスリ・ドールの初配信〜FランクからSランクを目指したい』
という枠に入っておく。
サムネには金色と緑色が交互に混じった長髪をしており、そして青眼であった。
シハイルさんは青眼なので、そこからきているのかな?
「皆さん、どうも初めまして、ノーヘル所属三期生マイナスリ・ドールです、ドールと呼んでください」
サムネ通りの子が話す。少し目つきが悪いように見える。
『ドールちゃん!』
『三人目、待ってました』
「さっそくだけど、はい」
自己紹介のカードがちょうどいい感じの大きさでドールの横にあった。
【マイナスリ・ドール】
役割…ヘイト、身長…167cm、目標…FランクからSランクになること、好きなもの…そば、モンブラン、嫌いなもの…どこぞの高橋、G
ノーヘルに引き取られた。最近、Fランクとして頑張っていつかしかSランクになってノーヘルの顔になろうしている。
「こんな感じですね、えっーと、目標がFランクからSランクになるということなんだけれども、Sランクになることが難しいのはわかっています」
『無謀じゃないか?』
『応援はするぞ』
そうだ、俺もSにいくまで苦労したものだ、今では最年少のSランクだがそれはものすごく頑張ったからで、それを目指しながら配信をしながらすることは中々オススメはできない。
FランクからEランクまでを一ヶ月以内のペースでいかないと、Aランクで伸びしろがなくなってしまうのだ。
「でも私はSランクになってまだ、Vダンで誰も配信していないAランクのダンジョンに挑みたいんです」
これはなにかありそうだ…俺がSランクを目指した理由はただ一時的に上位でありたいからだ、ゲームだって一回だけ上位になりたくなるのだ、ただ失敗することは命がなくなることでもある。今の時代はダンジョンのせいで命が前よりも軽くなっている。
「自己紹介についてはこのぐらいにしておいて、スパチャ、充希さん、せんきゅー、じゃあ、このゲームをします」
それは見たことがあるゲームで、こういう状況ならどうするか?みたい感じで、空気を読む能力がいるゲームですね。
「ヘイト役たるもの、空気は読んでおかないと、そういうことでしていきまーす」
一問目、クリスマスか正月か?クラスのみんながクリスマスを選んでいる絵だった。
「正直、私正月の方が好きなんで」
正月の札を上げる。
ヘイト役とは?そんな疑問に埋め尽くされた。
そういうような感じで始まり、そして…
「これでラストの問題終わり!結果は…」
ドールはワクワク感があるが視聴者は、
『これは空気読めないですね』
『そう思う』
『それしかない』
「空気読めないだと…」
明らかにショックを受けるドール、うん知ってた。
「じゃあみんな、お疲れ様」
そういい、エンディングに入った。本当に今頃だが、ドールが嫌いなどこぞの高橋って俺のことではないか?そう思ってしまっていた。




