十一話 脱走した者
「ふぅー」
俺は伊原スタノの配信を見終わり、テレビをつけてニュースを見ることにした。
『次のニュースです、前日未明、嵐の王のメンバーフラックが謹慎中にもかかわらず脱走したことがわかりました、エピンゴール社はフラックのプレートの機能を停止し、今もなお探索が続いています』
そうなんだー、フラックって謹慎していたんだ。でもまぁ、もう関係ないし、無視無視。
シハイルさんの配信の枠は…ってお、できてる。
俺はマイナスリ・ドールの配信に入っておいた。
「くっ!」
なんとか欺かないと…。
街の中で彼は壁を背景にしながら隠れていた。
「はぁはぁ」
前日から逃げ回っているので休憩ができていない。なので体力の限界がきているようだった。
早くあいつに伝えないと!きっとあれを防げるのはやつだけだ。
彼がこんなにも必死になっているのはとあることを聞いたからだ。正確には盗み聞きだが…
『リトウ、彼ここ最近きてないね』
『そうですね、でもお店には少女をつれてきてたわ』
『え?あの、今までSランクになるためだけに集中していたあまり、異性から気持ち悪いとか言われていたクローが?』
『そうだ、あとクローがSランクになってからもパーティーにいたけど、なんで辞めたのかな?』
『そんなことより、その少女の見た目とかは?』
つまり、クローは本当はSランクだったのだ、俺らがCランクだと勘違いしていたのは、彼のサブ垢プレートの方だろう。
「くそっ」
弱々しい声で呟く。
こんなところでくたばっている俺はなんて無力だ、そして魔王を倒せるメンバーの一人は間違いないクローになる。
早く会って『魔王がやってくる』ことを教えないと…。
「あ、」
今頃気づいた、これってシハイルさんが終わったら俺なのはわかるが…現場にいとかないと。
俺はパソコンの電源を落とし、家を出る。
マイナスリ・ドーンの配信時間まではあと三十分あるから間に合うはず。
そう走っていると、明らかにボロボロな男性、いや見知った人がいた。
「フラック?」
なぜ、こんなところにって!そうだ脱走中だった。
「誰だか知らないが…お願いがある…」
明らかに声が弱々しい。お願いとは?
フラックは続ける。
「クローに言ってくれ…魔王がやってくると…」
バタッ!
フラックは倒れこむ。
魔王か…なるほど、でも明日にしよう、今日は配信だ!
俺は再び事務所に向かって走り出す。
着くと、俺はフラックが捕まったことを知った、疲労困憊の状態で。




