二人暮らし
寝室のドアを開け、目の前の光景を見て私は固まった。
ベッドが一つしかない。
クイーンサイズの大きなベッドが部屋の中央に置いてあり、枕が二つ並べてあった。
(浴室にばかり気を取られて寝室のチェックしてなかったわ。これはヤバいでしょ・・・)
昨夜は個人のドームを用意してもらってたから何の心配もしていなかった。
てっきりベッドは別々に用意されていると思っていたのだ。
お風呂からあがったばかりだというのに、変な汗がダラダラと出てきた。
(どうしよう。とりあえず今日のところはソファーで寝ればいいか)
枕とブランケットを持って行こうとしたら、シヴァが部屋に入ってきたので私は飛び上がった。
「もうお風呂からあがったの?早すぎない?」
「そうか?あまり長く浸かると疲れそうだったんでな」
シヴァはさっさとベッドに入った。
「どうした?まだ寝ないのか?」
「えっと、この状況じゃ眠れないかなぁっと思うんだけど・・・」
シヴァは周りを見渡して首を傾げた。
「・・・枕が変わったからか?」
「違う!そうじゃない!」
(口説くとか言ってたくせに!天然か!それともやっぱりからかってたの!?)
「・・・二人で同じベッドに寝るのはちょっと抵抗があるの」
「仕方ないだろう、ガロンがいないんだから。今日から二人で暮らすことになるんだ。三人で一緒に寝れなくて寂しいのは私も同じだ。我慢しろ」
(・・・あれ?)
最近三人で川の字になって寝ていたせいか、シヴァは私と一緒に寝るのが当然だと思ってるらしい。
シヴァの言動からは性的な含みは全く感じられなかった。
(なんか、変に意識していた自分が馬鹿みたい)
私はおずおずとベッドに入った。
「・・・ガロン、今頃どうしてるかしらね」
「そうだな。うまく周りに溶け込めているといいんだが」
「三日月班の皆は優秀だったわね。それにとっても可愛かった」
「・・・言っておくが全員いい年した大人だからな。抱っこしようとか思うなよ」
「そうなの?何歳くらい?」
「恐らくお前と同じかちょっと年上くらいだな」
「ええ!?」
あの愛らしい彼らが小さいおっさんの集団だったなんて。
「なんか、騙された気分だわ」
「何だそれは」
シヴァはくっくっと肩を揺らして笑った。
「さあ、明日からまた忙しくなるぞ。早く寝ろ。お休み」
「・・・おやすみなさい」
シヴァの態度はいつもと何も変わらなかった。
私はホッとしたような、少し残念なような、何だか自分でもわからない複雑な思いを抱えながら目を閉じた。