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建設部隊 三日月班

 朝食後、食堂で静かにお茶を飲んでいたシヴァがふと顔をあげた。


「どうやら到着したようだな」


「あら、じゃあ扉を開けなきゃいけないわね」


「いや、その必要はない」


 シヴァは外に出ると敷地の中央の庭園があった辺りに歩いて行った。

 ラーソンを見ると肩をすくめてわからないというジェスチャーをしたので、とりあえずついていくことにした。


「シヴァ、こんな所で何を?」


  私の言葉が終わらないうちに、目の前の地面がポコポコと盛り上がってきた。

  そして、たくさんの小さな黒い影がヌルリと出てきたかと思うと、私たちの前に横三列に並んだ。


「魔王様の命によりこのたび派遣された建設部隊の三日月班です。我ら一同、シヴァ様の手足となって働く所存です。何なりとご用命ください」


 リーダーらしき魔物が挨拶すると、30 匹ほどの魔物が一斉に頭を下げた。


「ああ、頼りにしている。住居と菓子工房についてはミホに指示を受けてくれ。酒蔵についてはラーソンが指示する。まずは住居を今日中に作ってもらおう。ミホ、説明を頼む」


 シヴァが私を前に出したので、小さな魔物達の視線が私に集中した。


(か、かわいい!)


 建設部隊はカワウソ、モグラ、ネズミといった小動物系の獣人達で構成されていた。

 左胸に小さな三日月の刺繍が施された黒いツナギを着ている。恐らく制服なのだろう。


(リアルシル○ニアファミリーだわ。ああ、もふりたい)


 リーダーらしきカワウソの獣人が進み出た。


「は、はじめまして、ミホ様。ご、ご指示を、お、お願いしまっ、す」


 彼はカタカタと小刻みに震え、薄っすらと目に涙を浮かべていた。

 見れば部隊全員がカタカタと震えている。


「いや、おかしいでしょ。みんな何をそんなに怖がってるの?私何もしてないわよね?」


  彼らの反応に少なからずショックを受けて思わず質問すると、カワウソはガバリと土下座した。


「お許しください。皆、その身に纏う魔力を目の当たりにして緊張しているのです」


「・・・」


(なんだ。このローブのせいか)


 彼らが怖がっているのが魔王様の魔力だとわかって一応納得がいった私は、これ以上怖がらせないよう愛想よくする事にした。


「別に怒ってないわ。皆と仲良くなりたかったからちょっと残念に思っただけよ。よろしくね」


「はい。よろしくお願いします」


 カワウソは、ホッとした様子で顔をあげた。


「じゃあ早速お願いするわ。まずは水回りの相談なんだけど・・・」



◇◆◇◆◇◆◇◆



 三日月班は実に優秀だった。

 上下水道の概念は皆無だったにもかかわらず、私の要望を理解してどうすればいいか話し合い、すぐに実行に移してくれた。

 水道は地下水脈から直接汲み上げるよう石管を通してくれ、下水道も専用の管を通して外壁側へ流れるよう計画を練ってくれた。


「敷地内の土中に排泄物を餌にする虫を放っておきます。一日に一度、枯葉を一掴み流せば良い土を作ってくれます。外壁側に草木を育ててはどうでしょう」


「いいわね。果実のなる木ならお菓子やお酒の材料になるわ。野菜を育てれば食費も浮くし、何より新鮮よね」


 打ち合わせが終わると彼等は早速作業を開始した。

 小動物が懸命に働く姿は愛らしく、いつまでも見ていたかったけれど、彼らの働きに応えるべく私は食堂にこもって料理を作った。



 小さめのパンケーキを何枚も焼き、チーズやスライスした果物を添えてテーブルに並べ始めた頃、見計らったようにシヴァが三日月班を連れて食堂に入ってきた。


「ミホ、彼らに休憩を取らせようと思う。食事の用意はできてるか?」


「ええ、みんなお疲れ様。たくさん食べてね」


 三日月班のみんなはポカンとしていた。


「え?ミホ様ですか?」


「ええ、そうよ」


 その時、料理を作るのに邪魔だったからローブを脱いでいた。だから私から全く魔力が感じられなくなって、面食らったのだろう。


「食事の時くらい緊張しないで楽しんでね」


 ニッコリ笑ってスープをよそってやると、彼らはホッとした様子でテーブルについた。というか、テーブルの上に飛び乗った。

 テーブルマナーもへったくれもない。


(まあ、小さいからしょうがないか。椅子に座っても届かないもんね)


 多少の行儀の悪さは仕方なし、と私は目をつぶる事にした。

 汚れたテーブルは後で拭けばいいのだ。


 彼らは我先にとばかりわらわらと皿の周りに集まり、手づかみでパンケーキを食べ始めた。

 そしてリラックスした様子でワイワイと話し始めた。


「なんだ、噂と全然違うぞ」


「やっぱりデマだったんだよ」


「美味いな、これ」


 ほっぺを膨らませてモグモグ食べてる姿も可愛いらしい。

 私はニコニコしながら話の輪に加わった。


「噂って何?私の事?」


「ええ、ミホ様が魔法も使わずにベルガー様を倒されたという、とんでもない噂が広まってるんです。あり得ませんよね」


 あはははは、と明るい笑い声が響いた。


「ああ、それなら本当だぞ」


 私が何か言う前にシヴァがアッサリと肯定した。

 笑い声がピタリとやみ、やがて三日月班の座っているテーブルがガタガタと激しく揺れ始めたので、私はスープが溢れないように鍋を持ち上げた。

台風19号で被災した皆様に心よりお見舞い申し上げます。

私の部屋も以前の台風の影響で雨漏りがひどかったので現在工事中。

その為パソコンが使えず初めてスマホで執筆しました。勝手が違うので時間かかりました。

次の更新には、しばらく時間がかかりそうです。


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― 新着の感想 ―
三日月班のクレーンゲームがあったら集めたくなりますね〜 ここに限らず ミホ×ベルガーの伝説は面白過ぎです
[一言] つなぎ着たカワウソ可愛すぎ シヴァ空気読まないな…いや面白がっているのか?
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