招かれざる者4
すこし残酷な表現が入ります。
(何を言ってるんだ、コイツは。
今までのやり取りを聞いてなかったのか?)
呆れて物が言えなくなった私は、思わずリアムの顔をまじまじと見てしまった。
リアムは私の視線を物ともせず、淡々と続けた。
「はっきり言わせていただければ、あなたの存在は全てにおいて予想外です。
そもそも、我々が召喚したのは勇者様お一人でした。
しかしあなたはこの世界に現れた。しかも、意識を保ったままで。これまでの歴史にはない事です。 非常に強い魂をお持ちなのでしょう。そして、恐らくその影響で、我々は貴重な召喚士を二人も失ってしまった」
「待って下さい。亡くなった人は本当に気の毒だと思いますが、それを私のせいって決めつけないで下さい。私、何にもしていません」
「そして、あなたは魔王の存在を予見した。魔王復活はつい最近の出来事で、知っている人間は国の中枢に携わる限られた者だけです」
「いや、人類の危機とか勇者といったら、どう考えても魔王が関わってくるでしょう?
その手の話は、漫画やゲームに溢れかえってますが。
だいたい秘密にしていても、100年周期で復活してるなら誰にでも予想できるんじゃないですか?」
「そして、先程のやり取りで感じましたが、あなたは非常に頭のいい方だ。与えられた情報を冷静に分析・理解して、己の力で考える事ができる」
「いや、あの会話のどこに冷静さを感じたんですか?」
「あなたも女神様より何らかの力を得た使者かと思い、しばらく心眼を使って視させていただきました。が、どうやら見当違いだったようです。何の力も感じ取れませんでした」
「当たり前です。ごく普通の一般人ですから」
「勇者による魔王の討伐は、この世界の調和を保つ為に必要不可欠です。
女神様より特別な力を与えられるとはいえ、簡単な事ではありませんから、長年の準備が必要です。 我々は魔王の復活に合わせ、勇者の育成を行っているのです」
「いくら大義名分を並べても、あなた方のやっている事は、親からすれば『誘拐』です」
「やはり、ご理解いただけませんか」
リアムは深くため息をつくと、立ち上がって杖を手にした。
「仕方ありませんね」
リアムが杖で床を2度叩いたのを合図に、神殿の雰囲気にそぐわない二人の男が部屋に入ってきた。
そして私はあっという間に拘束されて転がされた。
「あなたは聡く、息子さんへの情愛も深い。
だからこそ、あなたの存在は危険だ。
あなたの思想は、我々の勇者育成計画、ひいては世界の調和を乱しかねない」
リアムは無表情で私を見下ろした。
「あなたには、勇者の第一の試練に協力していただきます」
(第一の試練?一体あの子に何をするつもり・・・)
「ああああああっ!」
突然左足に激痛が走り、私は叫んだ。
リアムの杖が足首に刺さり、靴下に血が滲んでいる。
「確かに、この世界の事情はあなた方には関係ない話かもしれません。
ですが、母親が魔物に殺されたなら、勇者にとって関係ない話とは言えないでしょう」
私は絶望で目の前が真っ暗になった。




