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スフィア

児童虐待の表現があります。

この部分は読まなくても本編の話に繋がります。

苦手な方はスルーして下さい。

(女神様、お願いします。皆を助けて下さい)


 スフィアは今日も心の中で女神様にお祈りした。


(もうずっと、家族に会っていません。帰ったら、もう()(まま)言いません。いい子になります。お(うち)に帰して下さい)


 どれくらい月日が経ったのかわからない。

 あの日、一人で伯父の所へ遊びに行った帰り道、突然目の前に知らない男と数匹の小鬼が現れた。

 小鬼達は一斉にスフィアに飛びかかってきた。

 一族の中で最も強い伯父から直々(じきじき)に訓練を受けていたスフィアは素早く身を(かわ)し、襲ってきた小鬼達を返り討ちにしていた。圧勝だった。

 けれども血のような赤い髪をした男に睨まれた途端、体中の力が抜けてしまった。

 男は、へなへなとその場に崩れ落ちたスフィアを軽々と持ち上げ、鳥籠のような狭い檻に入れた。

 

「いいか、逃げようとしたら痛い目見るからな。大人しくしていた方が身の為だぜ」


 男の言葉通り、逃げようとする度に激痛が走った。体中が見えない鎖に(しば)られているようだった。

 

「言っただろう、俺から逃げられると思うなよ。抵抗するだけ無駄だぜ」


 こうしてスフィアは攫われ、この地下室に連れてこられたのだ。

 ここには他にも捕われた子供が何人もいた。みんなスフィアよりも年上だった。

 一人じゃない事に少しホッとしたけれど、すぐにそれは何の慰めにもならない事を悟った。


 スフィア達は人間の管理下に置かれた。

 食事が与えられるのは、一日に一回だけ。蒸かしたイモと一欠片のチーズ、たまに野菜のシチューという粗末な食事が与えられた。

 水だけはいつでも飲めるよう、各檻の中に水瓶が用意されていたけれど、減った分を継ぎ足していくだけで洗ってないので、なんだか変な匂いと味がした。

 初めのうちはお互いの身の上話をしたり、どうやったら逃げられるか話し合ったけれど、そのうち誰も何もしゃべらなくなった。

 お腹が空いて力が出ないので、ずっと座っているか、眠る事しか出来なかった。

 そのうち頭の中もぼんやりとモヤがかかってしまったかのようになり、考える気力も無くなっていった。


 ここではスフィアの理解できない、おかしな習慣があった。

 三日、または四日の間を空けて全員檻から出され、頭から水をかけられて洗われる。

 そして全員お揃いの白いワンピースを着せられ、広くて綺麗な部屋に連れられて客の前に一列に並ばされるのだ。

 客は子供達の中から一人を指差し、それ以外の子供達はすぐに地下室へと戻された。

 指名されることが多いのは、スフィアよりも年上の獣人やエルフなど、亜人の綺麗なお姉さん達だった。

 ごく稀に男の子が指名される時もあった。彼らを指名する客は決まっていたので、男の子達はその客を見ると絶望的な顔をして、お姉さん達はあからさまにホッとした顔をしていた。

 指名された子は、次の日の朝まで戻らなかった。

 食事の時間、見張りに連れられて戻った子は、泣きはらした目をしていた。

 そして、何があったのか尋ねても首を振って何も語らず、食事もとらずに膝を抱えて震えていた。

 だからスフィアは長い間、彼らの身に何が起こったか正確には知らなかった。

 身体の所々に痣があったから、きっと殴られたり蹴られたり、ひどい扱いをされて傷ついたんだろうと思っていた。



(ずっと、知らないままでいられれば良かったのに・・・)

書いてて辛くなったので、2回に分けます。

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