招かれざる者2
用意された部屋は、ベッドと丸テーブルと椅子があるだけのシンプルな部屋だったが、明るく清潔だった。
アルヴィンは蓮を丁寧にベッドにおろし、私に椅子を勧めてくれた。
「あなたもお疲れでしょう、どうぞ」
「ありがとうございます」
荷物をおろして、ようやく一息つく。
蓮は、よく眠っている。
「ここは、どこですか?」
「アビラス王国の首都グラードにある女神の神殿です」
(アビラス王国・・・聞いた事もない国だ)
私は窓から広がる景色に目を向けた。
神殿は小高い丘の上に立っているらしく、街の様子がよく見えた。
中世ヨーロッパの都市のような石造りの建物。街を囲むように城壁があり、その向こうは農耕地や森が広がっている。
恐らく、ここは城郭都市の作りになっているのだろう。完全にファンタジーの世界だ。
「異世界なのに、なんで言葉が通じるのかしら?」
ふと、思った事が口についた。
「それは、おそらく女神様の加護があるからでしょう」
アルヴィンは考え込むように言った。
「お気づきの通り、あなた方は我々からすれば、異世界の方です。
我々は、女神様の力をお借りして異世界への道を開き、女神様に選ばれた方を召喚します。その際、女神様よりこちらの世界の理が与えられるといわれています」
(なるほど。
あの穴に落ちた時、感覚がなく気分が悪くなっていたのは、膨大な情報に体が追いついてなかったのか)
「じゃあ、あの子がまだ目を覚まさないのは・・・」
「女神様の祝福を受けているからでしょう。心配はいりません。2日もすれば目を覚ますはずです」
おかっぱ頭が部屋に入ってきた。
「神官のリアムと申します。今後の事をお話しましょう。どうぞこちらへ」
話をしたいのは山々だが、蓮が心配だ。ちらっと蓮を見た私に気づいた神官はにこやかに言った。
「ご心配なく。勇者様のお世話は、こちらの侍女にお任せください」
おかっぱ頭の後ろに控えていた若い女の子が、控えめにお辞儀をした。
手には水差しやコップ、清潔な布などをのせたお盆を持っている。
「・・・わかりました。詳しいお話を聞かせて下さい」
「勿論です。アルヴィン、荷物を持って差し上げろ」
(この訳のわからん世界から蓮を守らなければ!)
私は意を決して神官の後をついていった。