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潜入3
「夕食の前に受付で料金を払ってくれ。明日の早朝発たないと、商談の時間に間に合わなくなる。
起きたらすぐに出発できるようにしておいてくれ」
「かしこまりました」
私は魔王様からお金を受け取り、受付にいった。
「三部屋分、前払いでお願いします」
「何だって?あんたら別々の部屋を取るのか?随分気前がいいんだな」
「若様を私達と同じ部屋で寝かせる訳にはいきませんから。部屋の空きがなければ一部屋で構いません。私達は荷台で寝るので」
「あんたなら俺のベッドを貸してやってもいいぜ」
受付の男がニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた。
(こっちの世界の男の人って、なんでこうなんだろう。女なら誰でもいいのか?)
私は苦笑した。
「若様に叱られますから・・・」
「そりゃ残念だ。あんたら冒険者じゃないんだな。それなら今日は離れの部屋が使えるかもしれん。宿の主人に相談してくるから、ちょっと待っててくれ」
受付の男が離れに走っていった。
「・・・とりあえず、宿の主人には会えそうですね」
「そうだな。私の民を盗んだ奴の顔は拝めそうだ」
魔王様は氷のような微笑を浮かべた。