パーティー
「うわぁ、すっげ〜!」
「見た事ない料理が沢山ある!」
「どれも美味しそう!」
「早く食べた〜い!」
私達の後について来たゲスト達は、テーブルに並べられた料理の数々を見て目を丸くし、子供達は喜んではしゃいだ。
「子供達のテーブルはそこだ。スタッフは両サイドに分かれてくれ」
シヴァの言葉に子供達が歓声をあげてテーブルへと走り出した。
「皆が席に着くまで食べちゃダメよ!」
すかさずメリッサが子供達に向けて声を張り上げる。
そんな中、クルトは少しグズってマチルダを困らせていた。どうやら席に不満があるらしい。ガロンを指差してぐずぐず言ってたけれど、ダンに何事か諭されて膨れっ面のまま他の子を追いかけて行った。
「エミリーとダミアンは、私達と同じテーブルにどうぞ」
好きな席に座るように言うと、エミリーは迷う事なく内側の真ん中の席に座り、ダミアンがその左側に座った。
「ガロンは私の右隣ね」
「うん」
エミリーが席に着いたのを見て、私達もテーブルに着いた。シヴァがガロンの向かいに座り、その隣に私、蓮の順で座る。
私の席は外側だったので、会場全体を見渡すことが出来た。
私から見て左側のテーブルに、ショーン、ダン、ラーソン、メリッサ、ベラが座っている。男性陣が内側に座ってるのは、お酒のお代わりをしやすいからだろう。
(どうやらジェラルドとトーニオの相手は、若いスタッフに任せることにしたようね)
右側のテーブルでは、マチルダ、カミラ、ジャスミンが外側に座り、ロザリン、ジェラルド、トーニオが向かい合わせに座っていた。
マチルダとロザリンが端にいるのは、子供達の様子を見る為に違いない。
「まずは乾杯しよう。皆、好きな飲み物を注いでくれ」
子供達のテーブルにはジュース、スタッフのテーブルにはエールのピッチャーが用意してある。
子供達がキャーキャー言いながらジュースを注ぐのが見えた。どうやらここに来る間に、すっかり仲良くなったようだ。
私がゲストの2人とシヴァにエールを注いでいると、ガロンがリンゴジュースを注いで、私と蓮の前に置いてくれた。
皆のカップに飲み物が満たされたのを見計らって、シヴァが立ち上がると、全員の視線が集まった。子供達の顔には、早くご馳走を食べたいと書いてある。
「皆の協力のお陰で、予定通りプリン専門店を開店できそうだ。このパーティーは我々からの感謝の印だ。皆、遠慮なく楽しんでくれ。では、プリン専門店の成功と皆の健康を願って、乾杯!」
「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」
上品にカップに口をつけるエミリーの両端で、ダミアンとガロンが豪快にカップを傾ける。
「・・・美味しい。すごくフルーティーなのね」
「ラーソンに直接言ってやって。すごく喜ぶわよ」
各テーブルからも「美味いっ!」「美味しい!!」と称賛の声が上がる。やっぱりラーソンの作るエールはひと味違う。
「っは〜、美味しい〜。思わず一気に飲んじゃった。ねぇ、お代わりしてもいいかしら?」
カミラに向けたであろうジャスミンの明るい声は、私たちにもハッキリ聞こえた。
「おう、樽にたっぷり入ってるから、どんどん飲んでくれ!」
反対側のテーブルに座っているラーソンが、カップを持ち上げニカっと笑う。それに対してジャスミンはヒラヒラと手を振り、愛想良く笑った。
「俺が注いで来てやるよ」
トーニオがジャスミンのカップを受け取り、いそいそと中央のドリンクコーナーに歩いて行く。
「トーニオって分かりやすいな」
「そうね、調子に乗らなきゃいいけど」
やにさがっているトーニオを見て、ダミアンとエミリーが呆れた顔をした。
「それにしても、すごいご馳走ね。どれから食べようかしら」
エミリーがワクワクした様子で料理を眺めながら言った。
「まずこの2種類のピザから食べてみて。温かいうちが美味しいから」
他の皆も知らないだろうから、蓮とシヴァに両サイドのテーブルにも同じ事を伝えてもらう。子供達のテーブルには、メリッサが伝えてくれた。
「ピザっていうのね。美味しそう」
エミリーはマルゲリータを一切れ取ってパクりと口に含み「ん〜っ!!」と言いながら顔を輝かせた。それを見たガロンが、嬉しそうに笑う。
「美味いだろ? 家族皆で作ったんだ」
「え?そうなの?」
「うん。窯から取り出すのは難しかったけど、楽しかった」
エミリーとガロンの会話を聞いて、ダミアンも反応する。
「へ〜、レンも手伝ったのか?」
「うん、俺のおすすめは、こっちの玉ねぎのピザ」
「玉ねぎかぁ・・・」
どうやらダミアンは玉ねぎが苦手らしい。あまり気の進まない様子で一口食べた後、真顔でまじまじとピザを見た。
「これ、本当に玉ねぎか?」
「そうだよ。なかなかいけるだろう?」
「ああ、美味いな」
他のテーブルからも、楽しげな声が聞こえる。特に向こう側のテーブルに座る子供たちは、顔を輝かせながら食べている。
「美味しいのは当たり前よ。どちらもコックス農場のチーズを使ってるんだから」
そう言うと、エミリーとダミアンは誇らしそうに笑った。
「んんっ!? この肉柔らかくて、すっごく美味しい!」
「ママ、これなんて料理?」
「何これ? エールにすっごく合う!」
皆、初めて食べる唐揚げやコロッケ、ポテトチップスを気に入ってくれたようだ。
内側に座っている男性陣は、入れ替わり立ち替わり飲み物のお代わりをしている。おかげでテーブルが離れていても、ドリンクコーナーでちょっとした交流は持てているようだ。
シヴァも食事を摂りながら、さりげなく全体を観察していたらしい。
「皆、仲良くできてるようだな」
「ええ。どのテーブルも話が弾んでるみたいで安心したわ」
皆、食事を楽しんでいる為、一番心配だったガロンへの反応も、今のところ全然感じられない。
(このまま何事もなければいいけど)
そう思った矢先、ガロンがスッと立ち上がった。
「ジュース注いでくる。ついでだからミホのも注いでくるよ。何がいい?」
「じゃあ、オレンジジュースをお願い」
「わかった」
ガロンがドリンクコーナーに向かうと、ちょっと緊張した空気が漂った。マチルダは不安気な様子で、カミラとジャスミンはカップを傾けたまま、警戒するような目でじっとガロンの動きを追っている。
ガロンは気にした風もなくジュースを注いでいたが、そこに突然クルトが突進してきた。
「ガロンお兄ちゃん!僕のジュースも注いで!」
「わぁ、クルト危ないよ。溢れるところだった」
実際のところ、クルトに飛びかかられたぐらいでは、体幹が鍛えられているガロンはびくともしないのだけど。
「どれにする?」
「リンゴジュース!」
「はい」
「ありがとう!ねぇねぇ、一緒に食べよう」
「後でね」
「後っていつ?」
「ん〜・・・、じゃあプリンを一緒に食べようか」
「絶対? 約束する?」
「うん。男と男の約束だ」
「わかった。じゃあ後でね〜」
クルトが席に戻ると、マチルダはホッと胸を撫で下ろしていた。ガロンがクルトに優しく接しているとわかっていても、やはり不安なのだろう。
カミラは相変わらず警戒した様子でガロンが席に戻るまでじっと見ていたが、隣に座るジャスミンはご機嫌な様子でポテトチップスを食べていた。




