表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/548

同行者

 ええーーーーーーーっ!!!


 魔王様の予想外の言葉に、広間中がどよめいた。


「何を驚く。ミホが言った通り今回は戦いにいく訳じゃない。私の民を取り戻しにいくだけだ。

 出稼ぎとはいえ、女が一人で無事に旅をしてきたというのは無理があるだろう。

 私は人型だから、人間に化けるのも簡単だ」


 確かに一理ある。

 魔王様が一緒であれば、不測の事態が起きて作戦変更となった時でも、すぐに指示を仰ぐ事が可能だ。

 だが、しかし!


(ラスボスがいきなり前線に出てくるってどうなの?)


 何より魔王様と二人きりで行動するなんて、私の心臓が持ちそうにない。

 社長と一緒にいきなり飛び込み営業に行く事になった新入社員の気分だ。

 せめて一人でもいい。他にも誰か一緒にいてくれる人がいてくれたら・・・


 ふと、ある人物が思い浮かび、私はおずおずと手を挙げた。


「すみません、そう言う理由であれば、もう一人同行者を希望します」


「いいだろう。誰か一緒に行きたい者がいるのか?」


「はい。モリスの弟のラーソンです。彼がいてくれると心強いです」


 私の言葉にモリスは驚いた。


「ラーソン!?何だってあいつを!?

 そりゃあ悪い奴じゃないが、がさつすぎて魔王様の御前にはとても出せんぞ」


「理由は色々あるわ。一つは実際にお酒を造っているから、話をふられても大丈夫な事。

 あれだけ美味しいお酒だから、商売したいって思う人もきっといるはずよ。

 もう一つは、彼の性格というか雰囲気というか・・・なんて言うか器の大きさかな。

 彼はあまり偏見を持たないでしょう?私やガロンに対しても最初から親しく接してくれたし。

 そう言う性格なら、宿にいる人間ともすぐに打ち解けてくれると思うのよ。

 あの大らかで明るい性格なら、みんなにお酒を飲ませる流れを(うま)く作ってくれると思う」


 私の意見にモリスは考え込んだ。


「確かに我ら兄弟の中ではラーソンが一番豪快だが・・・器が大きい?あいつが?」


「ええ。彼はなんて言うか、垣根が低いのよ。あるがままに人を受け入れる事が出来る。

 それに、すぐに相手の懐に入る事が出来るコミュニケーション能力の高さは、一種の才能だと思うわ」


「なかなか面白そうな奴だな。私も一度会ってみたい」


 魔王様が興味を示したため、モリスは断れなくなってしまった。


「わかりました。近々ご挨拶に伺わせます」


「その時はミホとシヴァも同席してくれ。時間が惜しい。打ち合わせも兼ねよう」


「かしこまりました」


「では、本日はここまでとする。各自、準備に取りかかるように」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 家に帰ってお茶の準備をしていると、シヴァがムスッとした顔をして傍らにやってきた。


「・・・ずいぶんとラーソンを買っているんだな」


「ええ。理由はさっき言った通りよ。力持ちだから何かあった時も心強いし」


「・・・同行するのは私でも良かったんじゃないか?情報を持つ私が一緒にいた方が動きやすいだろう」


「ううん。シヴァの性格からして、宿の人間や冒険者達と楽しくお酒を飲むなんて出来ないでしょう?

 第一、シヴァが人間に化けたとしても目立ちすぎるわ。無駄に顔が良すぎるんだもの」


「無駄・・・」


 私の言い草にシヴァは微妙な顔をした。


「もちろんシヴァが側にいてくれれば一番いいけど、魔王様が一緒となると絶対に動きや言葉が固くなるでしょ?不自然よ。その点、ラーソンなら心配いらないかなって」


「・・・モリスは別の意味で心配してると思うぞ」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆


 数日後、打ち合わせの為に魔王様に呼ばれた私達は、再び謁見の間へと赴いた。

 モリスは魔王様の側に控えていたが、ラーソンの姿はなかった。


「ラーソンはまだ来ていないようだな」


 そうシヴァが呟いた時、扉が開いてラーソンが入ってきた。

 彼の双肩にはそれぞれエールと果実酒の樽が抱えられていた。


「おお!シヴァ、ミホ。この間ぶりだな。今回の作戦を聞いたぜ。

 まずはうちの酒を魔王様に飲んでもらおうと思って持ってきたところだ。

 ついでにミホの快気祝いも兼ねるか!」


 わははははっとラーソンは豪快に笑った。


 あまりにもいつも通りのラーソンを見て、私とシヴァはあっけにとられた。

 恐る恐る前を見ると、魔王様は俯いて口元を拳で隠し笑いをこらえていたが、肩が震えていた。

 側に控えるモリスは両手で顔を覆っていた。


「・・・おつまみ作ってきま〜す」


 私は回れ右してキッチンに走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ