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勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


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勉強と経験

 その日の夕食の話題は、会議についてだった。


「その場で参加者全員から意見を引き出したの? 凄いわね」

「昨夜シヴァさんに協力してもらった時に思いついたんです。お陰で充実した会議になりました」

「しかし君は昨夜のうちに、全ての案の問題点と対策を書いていたじゃないか。なぜそれを発表しなかったんだ?」


 シヴァの言葉にショーンは肩をすくめた。


「確かにその方が手っ取り早かったでしょう。でも、一から十まで誰かを当てにするような従来のやり方ではダメなんです。己で考える力をつけないと、いつまでも成長しません。

 それに発想力もなく、意見も出さないくせに、後から結果だけを見て批判する人が多いんですよ」

「あ〜、いるわね。そういう人」

「でも今回の事で少しは意識改革ができたと思います。自分自身の考えが取りあげられたら意欲も高まるでしょう。それに身分に関係なく、その人自身の能力を評価する基準にもなりますから」

「そうね。世襲制を全否定するつもりはないけど、国の要職には能力の高い人が就いて欲しいわ」

「ええ。ソルーナ共和国の礎を築く為にも、有能な人材を見極めないと」


(先生は今日の会議の議題だけじゃなくて、その後の事まで考えてるのか。凄いなぁ)


 蓮は感心しながら大人達の会話を聞いていた。


「ところでミホさん、その後、体調はいかがですか?」

「特に問題なかったわ。心配してくれてありがとう」

「それなら良かった」


 ショーンは安心したように微笑んだ後、シヴァを見た。


「シヴァさん申し訳ないんですが、明日の午後、少しお時間をいただけますか? 各種菓子店の案に関する質問で自分では分らないことがありまして、ご意見を伺いたいんです」 

「わかった。昼食後、そちらに行けば良いのか?」

「ええ、助かります。レン、明日の午前中は資料をまとめるのを手伝ってくれ」

「はい。分かりました」


 そう言って頷くと、お母さんが感心したように言った。


「蓮は凄いね。お母さん、まだ数字と曜日くらいしか読めないわ。蓮を見習って勉強しなきゃ」

「先生の教え方が上手かったんだよ。単語のカードとかオリジナルの本とか。明日持ってくるね」

「ありがとう。ドルチェの業務がない今のうちに勉強しようっと」


 紙とペンを用意しなきゃ、とニコニコ笑うお母さんを見て、ショーンはふむ、と考え込んだ。


「国の発展の為にも識字率を上げる必要がある。子供のうちから教育するのが一番良いけれど、実現させるにはお金も時間もかかるな」

「それも議題に上げればいいんじゃないか?」

「ええ、勿論そのつもりです。でも急を要するものではないですから、恐らく後回しにされるでしょうね」


 ショーンは少し寂しそうに言った。


*****


「お母さん、これ昨日言ってた教材。俺も日本語で書き込んでるから分かりやすいと思う」

「わ〜。嬉しい! ありがとう。早速、今日から勉強するね」


 朝食後に持ってきた教材を渡すと、お母さんは本当に嬉しそうに笑った。読書が好きだったお母さんは、きっと活字に飢えてたんだと思う。

 シヴァも興味深そうにその内の一冊を手に取り、パラパラと目を通して苦笑した。


「これは君が書いたのか? 随分とユニークな内容だな」

「あ、それは当時レンに覚えさせた単語だけで書いたものでして…。いや、お恥ずかしい」

「俺は面白いと思ったよ」

「あら、楽しみだわ。早く読めるように頑張ろうっと」


 お母さんの言葉に、ショーンは困ったような表情で頭を掻いた。

 その後、家に帰った蓮は、回収した資料の全てに目を通して、各案件の質問事項や問題点を書き出す作業に追われた。

 

「全体的に賛成多数だね」

「ああ。だが具体的な対策案は少ない。問題を見つける事が出来るのも、必要な能力なんだ。例えばこの人は、ドルチェ監修の菓子店が多数出ると、他店の売上げが減るだろうと懸念している。国が助成金を出すなら菓子以外の店も検討すべき、その点、洗濯代行ならばエリアや季節問わず需要もある、と代替え案も出してくれている。なかなか有能な人物だ」

「託児所の案に色々書いてくれてる人がいる。まだ歯の生えていない赤子を母親から引き離すのはどうかと思う。赤子の母親を優先的に職員にしてはどうか。また食事についてだが、託児所で山羊を飼って山羊のミルクを飲ませてはどうか、だって」

「良い考えだね。その案を考えた人の名前も書いておいて」

「託児所で山羊を発想するって面白いね」

「発想力というのは、その人が得た知識や経験がもとになっている。この人は多分、奥さんに先立たれたんじゃないかな」

「あ…」


 言われてみれば、託児所案には色々と書き込みをしているが、他の案に関しては、ありきたりな質問ばかりだ。


「たったこれだけの情報で、よくそんなことが分かるね」

「あくまでも想像だよ。まあ、経験の差もあるけど」

「12年間引き蘢りだったのに、どうやって人生経験積んだのさ」

「読書って、色んな人の人生の疑似体験が出来るんだぞ」

「成る程」


 でもその知識を活かせるかどうかは、本人次第だ。


(やっぱり先生は凄いなぁ。俺も見習わなくちゃ)


 色んな事を学んで、沢山の経験を積んで。

 人も魔物も、誰もが平和で暮らせる未来につなげよう。

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― 新着の感想 ―
そういや、話すのは問題ないのに文字は読めないんでしたっけ、駄女神の半端チート。
[良い点] いつも、拙い感想にお忙しいだ ろう中ありがとうございます!職字率 は、ショーンが色々考えた 上での政策を 楽しみにしています^ ^次は どうかな?とかこうかな?と、、、 私感ですがね汗 …
[気になる点] ミホ、文字の勉強が楽しそうで良かったです。 もっと国が文字を広めてくれたら アレックス達も手書きで大忙ししないで良いのに 木版はが無理なら刺繍で各自に名前入りの ハンカチを作って国から…
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