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勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


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追走

 魔物を取り逃がした事と逃走した方角を報告するため、レン達は一度アルヴィンと合流した。


「すみません。3人で追いつめたにもかかわらず、目の前で逃げられてしまいました」

「気にするな。それより住人に被害は?」

「人的被害は出ていません。ただ魔物が家禽の飼育小屋を壊した為に数十羽のガチョウが逃げ出しました」

「隊の中で怪我をした者は?」

「いません。魔物は我々に反撃せずに逃げ回るだけでした」

「そうか。被害がなくて何よりだ」


 全員の無事を確認してアルヴィンが頷くと、フィリップが片手を上げた。


「隊長、一ついいですか」

「何だ?」

「近くで姿を確認しましたが、リストに載っていたどの魔物の特徴にも当てはまりませんでした」

「すると、やはり闇取引された奴か」


 魔物は自ら帰らずの森から出てくることはないが、首都内にも魔物はいる。冒険者によって生け捕りにされた魔物が、軍や騎士の訓練用に売買されているからだ。そういった魔物は厳重に管理されており、購入者や魔物の種類などが軍や各エリアの警備隊、そして聖騎士の元に報告する事が義務づけられている。

 しかし秘密裏に魔物を所有している人間は一定数いる。嗜虐(しぎゃく)趣味の対象として、頑丈且(がんじょうか)つ死体の残らない魔物はうってつけだからだ。

 正規ルートで売買された魔物は実戦訓練を経ておよそ1週間以内に死んでしまうが、闇ルートで売買された魔物は生かさず殺さずの状態で飼われている。劣悪な環境の中で(なぶ)られて玩具にされた魔物は、どんなにボロボロの状態であっても隙あらば一矢報いようと牙を剥くので非常に危険だ。

 しかし残念ながらそんな魔物が摘発される事はない。闇ルートで魔物を買うのは、財力と権力を併せ持つ貴族だからだ。彼等は捜査の手が伸びる前に魔物を始末すれば証拠も残らないので、捕まる事はないと鷹揚に構えているのだ。

 実際、腕や足を喰いちぎられて治療師の元に運び込まれた下男の証言があっても、事故でショックを受けた為のうわごとと一蹴されて終わった。魔物の存在が確認できなかった為、それ以上の追求が出来なかったのだ。


「ここまで大騒ぎになったんだ。どれだけ高貴な相手でも摘発して責任を取らせねばな」


 アルヴィンが眉をしかめると、フィリップは首を傾げた。


「飼い殺しにされているようには見えませんでした。動きも敏捷でしたし、売られる前に逃げ出したのかもしれません」

「ふむ。無傷で捕獲されたのなら、痺れ薬や眠り薬入りの餌を食べたのかもしれないな」 

「あと、奴はどうも神殿を目指しているようです。もしかしたら、この光と関係があるかもしれません」


 フィリップの言葉に聖騎士達は空を見上げた。


「確かに、こんな現象は見た事がない。あの光に引き寄せられているのか、それとも止めようとしているのか…? 何にせよ神殿にいる人々を危険に曝す事は出来ない。皆、気を引き締めてかかれ!」

「「「「「はっ!」」」」」


 聖騎士達は馬に鞭を打って追跡を再開した。

 居住地区を抜けて丘に着くと、(くだん)の魔物が道を無視して真っ直ぐに神殿を目指しているのが見えた。


「ダメだ。ここにも人がいる」


 魔法攻撃ができなくて、レンは歯嚙みをした。

 見通しがよく開けた場所とはいえ、神殿に続く道には巡礼者が点々といる。道は馬車での移動を考慮して緩やかに蛇行しており、例え魔物と離れていても、ここから魔物と直線上に位置する場所にいる者は魔法攻撃の巻き添えになってしまう。

 

「いたぞ! 追いついて全員で囲め!」

「「「「「はっ!」」」」」


 アルヴィンの指揮で陣形をとって追いつめようと馬を走らせると、魔物がくるりと振り返り、大きな口を開けた。


 がおぉぉぉぉぉっ!!


 魔物の咆哮(ほうこう)は、ビリビリとした衝撃波となって全員に襲いかかってきた。

 直接的な痛みを感じなかったものの、次の瞬間レンの体は空中へと放り出された。魔物の声に怯えた愛馬が暴れたのだ。


「ううっ…」

「いててっ!」


 地面に振り落とされたのはレンだけではなかった。仲間全員が地面に横たわり呻いている。咄嗟に受け身をとったので大怪我はしていないが、痛みがないわけではないので、皆立ち上がろうとして顔をしかめていた。


「声だけでこれほどの威力とは…。やはり危険だ。みんな、急げ!」


 しかし馬に跨がっても、そこから先に進む事は出来なかった。腹を蹴っても鞭で打っても馬はその場所で足踏みをしてグルグルと周り、魔物に近づく事を嫌がったのだ。戦闘音に耐えるよう訓練され、実際に戦争も経験している軍用馬が、あの魔物のたった一声で使い物にならなくなってしまった。


「くそっ! こうしている間に距離が開いてしまう!」


 魔物の方に目を向けたレンは、次の瞬間目を見張った。魔物の進む先に、神殿から下ってくる白い馬車が見えたからだ。

 扉に女神様のシンボルが描かれたリアム神官専用の馬車に、魔物は真っ直ぐに向っていた。


「神官様が危ない!」


 レンは馬から飛び降りると、アルヴィンの指示を待たずに走り出した。

読んで下さってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
囚われていた魔物一斉解放と関わっていた者一斉粛正! これからはグレゴリーの配下の監視カメラが逃さないぞ◎
[良い点] 楽しく読ませて貰ってます。 物語中の価値観が自分にあってるんだろうなー。 [一言] この物語全般、とくにこのシーンのこのスピード感とアクションはジブリが映像化したら面白そうと妄想してしま…
[一言] これでレンがガロンを殺したりしたらレンはきっと歴代最悪な勇者と呼ばれそうそれに知らずとはいえ自分の母の恩蜥蜴で義兄弟を殺したらレン鬱になりそう この調子だとあと10数話で終わるかな?
2022/03/07 06:19 サカサカナ
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