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シヴァ

 意味深な言葉の後、ドワーフはお茶を飲んで一息ついた。

 お茶のおかわりを注ぐと柔らかく微笑んだ。


「ありがとう。ああ、自己紹介もまだで失礼した。私はモリスという。よろしく」


「こちらこそよろしくお願いします。モリスさん」


「モリスで構わんよ。私もミホと呼ばせてもらおう」


「モリスはシヴァと親しいんですか?」


「そうだな、先の夜の時代から一緒に幹部として魔王様に仕えた仲間だ。 

 シヴァはクールで無口だが圧倒的な魔力と戦闘力を持っていて、仲間内からも一目置かれていたよ。

 冷静で頭もきれるから魔王様からの信頼も厚かったが、あまり他人を寄せ付けないやつだった。

 同じく戦闘力の高いベルガーは、一方的にライバル視していたな。

 魔王様が封じられた後、シヴァは他の幹部との交流を一切断っていた。

 最近、集落で食料などを買い物する姿が見られるようになって、居場所が特定できたんだ。 

 まさかこんな森で隠居しながらリザードマンの子供を養子にしたり、人間を匿まったりしてるとは思わなかったぞ」


「へえ、そうなんですか・・・誰ですか、それ?」


 モリスから聞かされるシヴァは、まるで知らない人のようだ。

 私が知っているのは、ガロンに甘い、食い意地のはった残念なイケメンだ。

 魔力が高いというが、私が実際に見たのはプリンを冷やす為に氷を出したことと回復魔法だけだ。


(回復魔法といえば・・・)


 私はガロンを見た。

 シヴァのおかげでベルガーから受けた傷は綺麗に治っていた。少しの傷跡も無い。

 副作用でガロンの体が大きくなる事はなかった。

 しかし翌朝、彼の胸筋は盛り上がり、腹筋が六つに割れた見事なマッチョボディになっていた。

 あれは何?と聞くと、シヴァは黙って目をそらした。 

 あきらかに、シヴァの回復魔法の影響である。

 ガロンは「強そう!カッコいい!」と喜んでいたけれど、私は内心泣いた。

 可愛くない。

 私の可愛いガロンが、これまで以上にゴツくなってしまった。


 モリスがパンケーキを食べ終わる頃、シヴァが帰ってきた。


「戻ったぞ」


「じいちゃん、お帰り。お客さんが来てるよ」


「客?」


 狩りの獲物をガロンに手渡しながら、シヴァがこちらを見た。


「やあシヴァ、この間ぶりだな。お邪魔してるよ」


「モリスか。お前が訪ねてくるとは驚いたな。待たせたか?」


「いや、こちらも突然だったからな。ミホにごちそうになっていたところだ」


 テーブルの上の空の皿を見て、シヴァは私に聞いた。


「私の分は?」


「あ、ごめん。無くなっちゃった」


「なんだと?私だけおやつの用意がないとはあんまりじゃないか?」


「ごめんね。でも、すぐ夕飯にするから・・・」


「狩りで森中走り回って疲れてるんだぞ。私が食べたいのは温かくて甘いものだ」


(コイツ・・・いい年して駄々こねだした。面倒くさい)


「シヴァ、モリスが訪ねてきてるのよ?まずは彼の話を聞いてあげて。私は夕飯の準備をするから。

 あ、モリス。良かったら夕飯も食べて行って下さいね」


「私だけおやつが食べれないなんて・・・」


(まだ言うか)


「夕飯のデザートに、シヴァの好きな木の実とフルーツのキャラメリゼを作るから。私の分もあげるから」


(だから黙って言う事を聞け)


「絶対だぞ」


(やれやれ、本当に食い意地のはったやつだ。さぞやモリスも呆れているだろう)


 ちらりとモリスを見ると、彼はガロンを側に呼び寄せてこう囁いていた。


「おい、あの男は誰だ?」


(・・・ですよね〜)

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