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謁見の間にて2

 目が合った瞬間、爛々と目を光らせた巨大な2足歩行の虎が、大きな口を開け飛びかかってきた。

 私は頭が真っ白になり、咄嗟に動く事ができなかった。

 そのままだったら、完全にその凶暴な爪の餌食になっていただろう。

 そうならなかったのは、シヴァが私の腕を引いて回避してくれたおかげだ。

 そして、再び襲いかかろうとする虎の動きを止めたのはガロンだった。

 彼はキッチンから飛び出してきて、猛スピードで虎にタックルした。

 不意を食らった虎はその勢いで柱の一つに激突した。脳しんとうを起こしたのか、うずくまって動かない。


「ミホ、来い!」


 その隙にガロンは私を左腕に抱き上げ、キッチンに戻ろうとした。

 しかし、邪魔されて怒り狂った虎が、それを許さなかった。

 ドア目前で行く手を阻まれ、ガロンと睨み合う。

 虎が鼻の頭にしわを寄せ、牙を剥いて威嚇してきた。


「邪魔するな、小僧!その人間をよこせ。八つ裂きにして食ってやる!」

「断る!」


 この虎の纏う雰囲気からして、恐らくはガロンより地位も強さも格上だろう。

 しかしガロンは、格上相手に一歩もひるむ事なく睨み返し、私を降ろして自分の背後に庇ってくれた。


「生意気な。まずは貴様から引き裂いてやる!!」


 虎がガロンに飛びかかった。


 ガロンは真正面から受け止め、床に転がった。

 床に転がったガロンの右肩に虎が食いつくと、ガロンも負けじと虎に噛み付いた。

 膠着状態がつづいたその隙に、私はキッチンに飛び込んだ。

 


 逃げる為ではなく、戦う為に。

 

 

 私は調味料をいれた籠の中から、素早く目当ての瓶を掴んでドアの前に立った。

 虎の爪がガロンのムネを切り裂き、赤い筋が広がるのが見えた。


「「ガロン!!」」


 私とシヴァの声が重なった。


 シヴァがガロンに駆け寄った。

 虎は彼らを無視して、私の方にゆっくりと近づいてきた。

 私は怒りのあまり震えながら叫んだ。


「うちの子に何するのよ!」


 そうして、瓶の中身を虎の顔に向かって思い切りぶちまけた。


「ギャンッ!!!」


 虎が悲鳴を上げて飛び退いた。


 瓶の中身は酢だ。


 自宅で猛獣を飼っている人が、酢を水で割ってスプレーに入れて持ち歩き、過激なじゃれ合いから身を守っているのを前にテレビで見た事があった。


 魔物にも効果は絶大だった。

 私でさえ、むせ返るような酸っぱい匂いに気分が悪くなるのだ。鼻の効く動物や魔物にはたまらないだろう。

 私は追い打ちをかけるべく、胡椒の瓶を手に取った。そして胡椒を一掴み手にとり、その鼻面に思い切り投げつけた。


 虎がクシュンともブシュンとも聞こえるくしゃみを連発して、苦しそうに開けたその口に、今度は塩を一掴み御見舞いしてやった。


「ぐああああぁっ!げほっ、げほっ・・・」


 虎は膝をつき、苦しそうに喘いだ。


 次はお湯でもかけてやろうか、と思っていた時、広間の奥から声が響いた。 

 

「そこまでだ。なかなか楽しい余興だったぞ」 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミホの咄嗟の うちの子に何するのよ! が素敵すぎて… 怒ってるミホには申し訳ないですが思わずニヤニヤしながら読んでしまいました
[良い点] ぱわふる〜
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