新しい家族2
シヴァは「面倒は見ない」と言いつつも、しっかり傷の手当をしてくれた。
「回復魔法は使えない事もないが、副作用が怖いからな。私は攻撃系の黒魔法の方が得意でね」
血止めの薬草を貼った足首に、クルクルと包帯を巻きながら、シヴァは言った。
「ガロンは、いわば私の回復魔法の被害者だよ。
卵から孵って間もないあの子が、魔獣に踏まれて死にかけていてね。
あまりにも不憫だったから、思わず回復魔法をかけたんだ。おかげで命は取り留めたが・・・」
シヴァは、せっせと私の寝床を用意しているガロンを見た。
「副作用のせいで鱗の色が変化して、身体の大きさも倍になった。
あの子の種族の鱗の色は、ふつう茶色や灰色でね。身長も私より小さいくらいなんだ。
なのに成長も早くて、たった10年でああなってしまった。
周囲から浮きまくって、いつも一人でいたよ。だから私が引き取って育てる事にしたんだ」
「そうなんですか」
見た目の違いで差別するのは、人間も魔物も一緒か。
本人の所為ではないのに。
(ガロンも辛い思いをしていたんだな)
しんみりとしている私に、いい笑顔でシヴァが言った。
「それでも良ければ、回復魔法をかけてあげるが?」
「遠慮します」
巨大化して緑色になるのはごめんだ。
(・・・ん?待てよ、いま10年って言った?ずっと、あの子って言ってるし・・・)
「あの、ガロンっていくつなんですか?」
「今年で13歳だ」
(13歳?蓮と同じ年!?)
「嘘でしょ!?私の息子と同じ年なんて、信じられない!」
「何だと?おまえ、子供がいるのか?」
お互い違うベクトルで驚き、大声を上げてしまった。
「13歳って、人間だと成長期なんですが・・・」
「あの子も今、育ち盛りらしくてな。常に腹を減らしている。お前、よく食べられなかったな」
(あ、やっぱり初めは食べるつもりで近づいてきたのか。
それにしても・・・)
「もっと大きくなるんですかね?」
「そうだな。そろそろ寝床も大きくしてやらないとな。
・・・家を改築するはめにならなきゃいいんだが」
シヴァはため息をつきつつ遠い目をしていった。
非常食というのも冗談ではすまされないかもしれない。
明日から、しっかり満足いただける食事を提供しなければ。
私達の胸の内も知らず、当の本人はうまく寝床ができたとご満悦だった。