反撃開始
月の日の朝、ダンはいつものように工房に顔を出した。
「おはよう、お母様の具合はどう?」
「ああ、ありがとう。シヴァに貰った薬のおかげで、すっかり元気だ。今日から普通に働く事も出来る。おふくろもすごく感謝してるよ」
「それは良かった。でも、くれぐれも無理しないようにしてくれ。また同じような事があるといけない」
「ああ。気をつけるよ」
その日からは特に営業妨害を受ける事もなく、商品をいつも通りさばく事が出来た。
最もしばらくの間、今日はこの間のイケメンは来ないのか?いつもはどこにいるのか?などと女性達の質問攻めにあったらしいが。
しかし、オーロラの日の朝、ダンが難しい顔をしながら食堂に顔を出したので、私達は異変が起きた事を知った。
「おはよう、ダン。どうしたの?」
「何かあったのか?」
ダンはため息をついた。
「やられた。昨日いつもの店に小麦粉を仕入れに行ったら、売ってもらえなかった。他の店も行ってみたけど全部ダメだった。オーティスの野郎に、うちに小麦粉を売ると店を潰すと圧力をかけられたらしい。店主は申し訳なさそうにしてたけど、向こうも生活がかかってるから背に腹は代えられなかったようだ」
私とシヴァは顔を見合わせた。
「すごいな。ミホの言った通りだ」
「うん。むしろ想像通りで笑えるわ。あの人、実はあんまり頭良くないんじゃないかしら?」
冷静な私達の様子に、ダンは目を丸くした。
「え?何でそんなに落ち着いてられるんだ?小麦粉がなけりゃ、菓子が作れないだろう?」
「そうね。いつものお菓子は無理ね」
私は笑った。
「オーティスの話を蹴った事で、こういった嫌がらせを受ける事は想定してたのよ。むしろゴロツキを雇って暴力に訴えてきた方が意外だった。もしかしたら、あっちは無関係かもしれないわ。
でも、小麦粉屋さんに圧力をかけたのは間違いなくあいつだもんね。たぶん、私達が泣きついてくるのを待ち構えているはずよ。恩を売って、思い通りに事を運ぼうとしてるはずだわ」
「そんな・・・どうするんだ?」
「うん。小麦粉を使わないお菓子はもう考えてあるの。今、その道具を発注してるのよ。多分、来週には届くんじゃないかしら」
「若様に頼んだって事か?いくら何でも早すぎないか?」
「実はこの件とは別に、前から売り出すことを考えてたのよ。ちょうど良かったわ」
「そうなのか?一体どんな菓子なんだ?」
「それは、来週までのお楽しみ♪
ああ、そうだ。シヴァと話し合って決めたんだけど、当分、西のエリアには行かなくて大丈夫よ」
「何だって?」
「あんな事があったからな。治安が悪い場所で商売する必要はない。犯人が捕まるまで営業は取りやめよう」
「西のエリアは中央広場の次に売り上げがいいエリアだぞ?」
「売り上げよりも、ダン達の安全の方が大事だ。この間みたいにいつでも手伝いに行ける訳じゃないしな」
「そういうこと。今日はダンの知り合いが多くいる冒険者ギルドの近くで屋台を出して」
「それは構わないが、本当にいいのか?」
「ええ。知り合いが多い方が安全だろうし、今日は冒険者向けの商品を用意してるから」
「冒険者達に何か聞かれたら、この間の犯人が捕まるまで、治安の悪い西のエリアではドルチェは商売しないって正直に話してやれ。恐らく明日には首都中に広まるだろう?」
「ああ、そう言う事か」
私たちの意図がわかって、ダンはニヤリと笑った。




