表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/540

新しい家族

「血の匂いで他の奴らが集まってくる前に帰るぞ」


 恐竜もどきは私を左腕に、荷物を右腕を抱えて、ものすごい早さで森を走った。

 私はなす術もなく、振り落とされないように、必死にしがみついた。

 途中、犬のゾンビのような魔物の群れに襲われたが、恐竜もどきは走るスピードを緩めず、トゲトゲの尻尾で薙ぎ払った。


「凄い!強い!カッコいいー!」


「そうか。俺、カッコいいか」


 恐竜もどきは嬉しそうに目を細めた。


 既に、彼に対する恐怖心はなくなっていた。

 心配するなという言葉通り、彼は私を食べるつもりはなさそうだ。

 魔物に飼われるのは屈辱だが、もしかしたら生き延びられるのかもしれない。


 てっきり洞窟にでも住んでいると思ったのに、彼の住処は意外にも普通の一軒家だった。

 石造りの壁は蔦で覆われ、屋根には白い花が茂っている。

 ヨーロッパの田舎にありそうな、インスタ映えしそうな家で驚いた。


 私を降ろして扉を開けると、彼は意気揚々と言った。


「じいちゃん、ただいま。

 ねえ、こいつ拾ったんだ。飼ってもいいだろ!」


 そう言って、私を家の中に入れてくれた。


 じいちゃんと呼ばれた人物を見て、私は驚いた。どう見ても20代にしか見えない超イケメンの青年だったのだ。

 褐色の肌に白銀色したストレートのロングヘア。金色の瞳の涼しげな目元。

 モスグリーンのゆったりしたロングチュニックと編み上げサンダルが、すらりとした体躯によく似合っている。


 イケメンは私を一瞥すると、にべもなく言った。


「だめだ。元いた場所に返してきなさい」


 イケメンに叱られて、恐竜もどきはしょぼんとうなだれた。


「でも、こいつ怪我してるし、腹も空かせてるし・・・」


「人間がこの森で生きていける訳がないだろう。すぐに死んでしまうぞ」


「俺がちゃんと面倒見るから・・・お願い」


「どうせ飼うなら、もっと頑丈な生き物にしたらどうだ」


「嫌だ。こいつがいい」


(なんだろう、この捨て犬を拾ってきた子供とそれを叱る母親のような会話は)


 私を置いてけぼりにして二人は言い合いを続けていたが、とうとうイケメンが折れた。


「そんなに言うなら好きにしなさい。

 自分で責任を持って最後まで面倒見るんだぞ。私は知らないからな」


「うん。じいちゃん、ありがとう」


「だが人間を保護するとなると色々と問題がある。他の奴らにその人間の事を聞かれたら、非常食だというんだぞ」


「わかった!」


 恐竜もどきは嬉しそうに私を見た。


「良かったな!そうと決まれば名前を付けなきゃ」


「私の名前は美穂です」


「ミホデス?」


「み・ほ!」


「ミホか。おれはガロン。よろしくな」


 私はイケメンを見た。


「あなたの事はなんと呼べばいいですか?」


「・・・シヴァ」


 ガロンとシヴァ。

 明らかに種族が違うけど、仲のいい家族のようだ。

 私は二人に向かってお辞儀をした。


「助けて下さってありがとうございます。

 これから、よろしくお願いします」


 こうして私は、彼らのペット(兼非常食)として暮らしていく事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ついにガロンとシヴァが登場! 漫画から流れ着いたので脳内に絵が浮かぶ はぁガロンかわええ。 いっぺんに読んでしまいたい衝動を堪えて大切に読ませて頂きます。
[一言] >「ねえ、こいつ拾ったんだ。飼ってもいいだろ!」 からの捨て犬を拾ってきて名前をつけようとする流れが秀逸です。 誰か私も養ってくれないかなぁ。(非常食はイヤだけど)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ