避難
「え?どうして?この辺りは結界で守られてるから、人間は入れないはずでしょう?」
ハムスターの言葉に、狐とカワウソがばつの悪そうな顔をした。
「とにかく早くここから離れるんだ。村に戻れ!」
よく見ると服からのぞく二匹の体のあちこちには焼け焦げた後や切り傷があり、毛並みはボロボロの状態だった。
「ひどい。攻撃されたの?」
「ああ。俺も反撃したんだけど、向こうは5人もいたし、魔法を使える奴がいたから・・・一緒にいたのがお前みたいな足手まといじゃなければ勝てたんだ」
狐の言葉にカワウソはカッとなって反論した。
「なんだよ、偉そうに。お前の攻撃なんて全然効いてなかったじゃないか!」
「言い争いは後にして。とりあえず戻りましょう。走れる?」
「ああ」
私達は急いで村に戻った。
ボロボロの二匹を見て、村人達は驚いて取り囲んだ。
「キーじゃないか。その傷はどうしたんだ!?」
キーと呼ばれたカワウソはうなだれた。
「ごめん、友達に唆されて結界の外に出たんだ。そしたら、狩りに来ていた人間に鉢合わせして・・・」
「何だって!?じゃあお前達、結界石を動かしたのか!?」
「ごめんなさい!三日月班は戦闘に参加しない腰抜けって馬鹿にされたから、度胸があるって証明したくて・・・」
狐は不貞腐れてそっぽを向いていた。
「ちょっと揶揄っただけだ。こんな事になるなんて、思ってなかったんだよ」
「それで、人間達は撒いたのか?」
その言葉に二匹は顔を見合わせた。
「わからない。俺たちが逃げてきたのは薮や倒木の多いところだから、馬では追って来れないと思うけど・・・」
モグラが両手を土につけ、目を瞑って集中した。
「東からこちらに向って歩いている気配がある。数は・・・5人」
「俺たちに攻撃してきた奴らだ。くそっ!狩りの標的を俺たちに変えたんだ」
「このままでは、半時もしないうちにここにたどり着くだろう」
「奴らは弓を持ってるし、一人は火の魔法の使い手がいる。俺たちじゃ敵うわけない 。早く逃げて」
キーの言葉に村人は騒然とした。子供達が恐怖で泣き出したので、私は安心させるために頭を撫でて宥めた。
「みんな、落ち着いて。まだ時間は十分にあるわ。子供達や女の人は今すぐ村に帰って。大丈夫。人間は村の中には入れないわ」
「しかし、火を使われたら逃げ場がありません」
「入り口をわからないようにする魔法はないの?」
「目眩しの魔法なら使えますが、もし相手が魔力探査できるとしたら、いずれバレてしまいます。単体の魔力は微量ですが、村に全員がいれば地下にいる事はわかるでしょう」
相手の能力がわからないので何とも言えないが、村に逃げ込むのは避けた方が良さそうだ。
「それなら沼に逃げましょう。カイル、三日月班の皆に指示して、舟を作って。村人を全員無事に逃がすのよ」
カイルの指示で三日月班は沼に向い、私は残った村人とともに沼に向った。
道中、私はカイルに尋ねた。
「あなた達は私の部下ではないけれど、今だけ私の指示に従ってくれる?あなた達が頼りなの」
「もちろんです。我々に出来る事は何でも言って下さい」
「ありがとう。やってもらいたい事があるの」
私の作戦を伝えると、カイルは驚いた。
「出来る?」
「もちろんです。お任せください」
沼に到着する頃には、既に3艘の舟が出来ており、20匹ずつ乗せる事が出来た。
「さあ、まずは子供達から乗って。その次は女の人。まだ舟は作ってもらえるから焦らないで」
先に子供を乗せていると、狐が一緒に乗り込もうとしてきたので私は首根っこを捕まえた。
「何だよ。他の奴らより大きいけど俺も子供だぜ。先に乗る権利はあるだろう!?」
「いいえ。あなたとキーはここに残りなさい。囮になってもらうわ」
「そんなっ・・・俺たち怪我もしてるのに」
「自業自得よ。あなた、三日月班を腰抜けって馬鹿にしたんですってね。挙げ句に結界を壊して、村を危険に曝した。二人ともまだ大人ではないにしろ、やっていい事と悪い事の区別はつく年でしょう。自分のやった事の責任をとりなさい」
「偉そうに!お前、何様だよ」
「今度新しく魔王軍の幹部になったミホよ。よろしくね」
にっこり笑うと狐は「ヒュッ」と息を吸って固まった。
「今から私の言う通りに動いてもらうわ。あなたが馬鹿にした三日月班がどれほど優秀か、しっかり自分の目で確かめなさい」




