表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/548

泣き顔

 泣いてもいいと言われ安心したのか、スフィアは声を出して泣き始めた。

 ベルガーは困った顔で立ちすくんでいたので、私はスフィアの側に行って座り、目線を合わせて黙って背中を撫でてやった。

 しばらくして泣き声がしゃっくりに変わる頃、スフィアのお腹がぐ〜っと鳴った。

 

「・・・あっ」


 スフィアはお腹を押さえて赤くなった。


「恥ずかしがる事ないわ。泣くのって結構体力使うからお腹空くのよね。何か軽く食べましょう。食堂まで案内してくれる?」


 スフィアはベルガーが頷いたのを確認すると、「こっち」と手を引っ張ってくれた。


「ちょっと行ってくるわ。しばらく二人で話してて」


「わかった。私のいないところでローブは脱ぐんじゃないぞ。食われても知らんからな」


 シヴァの言葉にヒヤリとした。


(そうだ。最近忘れそうになるけど、魔物は人間を食べるんだった・・・)


「・・・肝に銘じます」 


◇◆◇◆◇◆ 


 ベルガーは自分の椅子にどっかりと腰を降ろした。


「参った。女子供に泣かれるのは苦手だ。どうしていいかわからん」


「私も苦手だよ」


「その割には辛辣だったな。苦しみが一生続くなんて、たとえ本当でも傷ついている子供に言うべきじゃないだろう」


 ベルガーの言葉にシヴァは天井を見上げた。


「そうかもしれん。私のやり方は間違っているかもしれない。

 だが、さっきガロンをどういう風に育てたか聞いただろう。見ての通りだ。

 私は、本人にとって辛い現実をごまかさずに伝えてきた。

 その上で、どうしたいか本人の意思を確認し尊重してきた。

 ここに来るのを決めたのもあの子自身だ」


「ここに来るのがそんなに辛い事か?」


 ベルガーが憤慨したように言った。


「誤解するな。お前の下で訓練を受ける事に文句がある訳じゃない。

 むしろ、私が教えるよりもあの子の能力を引き出してくれると信じている。

 ただ、あの子は実の親から持て余されて私が引き取る事になった。

 ようやく私に甘えられるようになった矢先に、また親元から離れて暮らす事になったんだ。あの時の、あの子の落ち込み方は可哀想なくらいだった。 

 家族の縁が薄いと感じてるかもしれない。

 過保護と笑われてもいいさ。私はあの子を守りたいんだ」


 シヴァはベルガーに向き直った。


「さっき訓練場の様子を見て思ったが、やはりガロンは目立ちすぎる。

 戦場では真っ先に標的になるだろう。

 お前を含めて、身体能力の高いパワー型の戦闘員は、つい防御を怠りがちだ。

 一対一の対決なら心配はないが、戦争となれば話は別だ。

 戦術や防御についてもしっかり教えてやってくれ」


「あの短時間でそこまで考えていたのか」


「ああ。魔王様は進んで戦争を起こす事はないだろうと信じているが、人間側から仕掛けられたら話は別だ。勇者を召喚した以上、近い将来戦争は避けて通れないとみていいだろう」


「勇者か・・・ミホはどうするんだ?」


「ミホはこちら側だよ。息子を奪還する為に奔走するだろうな。どんな行動に出るかは予想もつかないが」


「仮とはいえさすが夫婦だな。随分あいつのことをわかってるじゃないか」


「考えてる事がすべて顔に出るからな」


「ほ〜、それだけよく見てるってことか」


 からかうようなベルガーの言葉に、シヴァはじろりと睨み返した。


「言っておくが、私が見てるのはミホだけじゃないぞ。

 さっきミホに怒鳴られた時、お前の尻尾の毛が逆立ってるのだってしっかり見てるからな」


「・・・勘弁してくれ」


 ベルガーが頭を抱えたのを見て、シヴァは苦笑した。


「お前はミホが苦手なようだが、あいつは種族の境なく子供を可愛がる愛情深い性格だ。

 だからこそ、戦争が始まったら深く傷つくだろうな」


 その時を思いやり、シヴァは瞳を閉じた。


「この先、どちらが勝っても負けてもミホは泣く事になる。

 可哀想だがどうすることもできん。

 私に出来るのは隣で支えてやる事ぐらいだ」


 泣かれるのは苦手なんだがな、とシヴァはため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ